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ソーシャリー・エンゲイジド・アート

Socially Engaged Art
更新日
2024年03月11日

アーティストが対話や討論、コミュニティへの参加や協同といった実践を行なうことで社会的価値観の変革をうながす活動の総称であり、SEAと略記される。近代的な美術館やギャラリーといったアートワールドの外に広がる社会へ関与するなかで、作者および作品という概念を脱して、参加や対話そのものに美的価値を見出す特徴がある。観客を巻き込むインタラクティヴな実践という点でニコラ・ブリオーが1990年代に『関係性の美学』で提示し、「トラフィック」展で紹介した「リレーショナル・アート」と呼ばれる作品群に通ずるものがあるが、必ずしも最終的な作品の完成が目的にあるわけではなく、むしろある一連の行為を通じて社会集団に介入を試みるという点で60年代のアラン・カプローの「ハプニング」の延長線上にあるといえる。主な論者としてクレア・ビショップ、グラント・ケスター、シャノン・ジャクソン、代表的な作家としてトマス・ヒルシュホルン、ポール・ラミレス=ヨナス、アイ・ウェイウェイなどが挙げられるが、トルコ・イスタンブールの「ルーム・プロジェクト」のようにひとりのアーティストではなくコレクティブなプロジェクトとして行なわれることもしばしばである。
実践は世界各地で行なわれており、地域の社会背景だけでなく性別・環境・国籍・難民といったアプローチする課題やアーティストの目的、得られる効果はそれぞれであるため、単一の動向として言及するのは難しく、用語の定義は試みられている最中である。日本では2015年にパブロ・エルゲラ著の入門書の邦訳版の刊行や「ソーシャリー・エンゲイジド・アート展 社会を動かすアートの新潮流」(アーツ千代田3331、2017)の開催等が行なわれている。

補足情報

参考文献

『ソーシャリー・エンゲイジド・アート入門 アートが社会と深く関わるための10のポイント』,パブロ・エルゲラ(アート&ソサイエティ研究センターSEA研究会訳),フィルムアート社,2015
『ソーシャリー・エンゲイジド・アートの系譜・理論・実践 芸術の社会的転回をめぐって』,アート&ソサイエティ研究センターSEA研究会(工藤安代、清水裕子、秋葉美知子)編,フィルムアート社,2018