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タブロー

Tableau(仏)
更新日
2024年03月11日

木板、もしくは枠に張った布(キャンヴァス)に描かれた絵のこと。壁画に対するイーゼル画を指すフランス語。語源はラテン語の「タブラ(tabula)」で、「木板」「書板」「文書」などを意味する。特定の建築や礼拝的機能と結びつく壁画と異なり、場や目的に規定されない持ち運び可能なものをタブローと呼ぶ。したがってタブローの誕生は、周囲の空間を遮断し内側に向かってまとまりをもたらす額縁の存在と不可分である。7世紀にはすでに、木材を支持体とするビザンチン芸術のイコン画が手掛けられ、貿易によりイタリアに渡ったという記録がある。また、タブローが下塗りの後にテンペラや油絵具などで描画をほどこした「完成した絵」を意味し、エスキースの概念と対置される場合もあるが、近代になるとエスキース風のタブローも登場する。例えばフランス・ハルス、ドラクロワ、コローの一部の作品では、描き上げることよりも事物を色彩や筆致に翻訳することがひとつの目的とされた。「仕上げられたタブロー」と「表現としてのエスキース」の差異が曖昧になった一方、諸芸術が自己言及による自律化を求めた近代においては、タブローそれ自体が造形上の問題とされるようになった。

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補足情報

参考文献

『空想の美術館 東西美術論1』,マルロオ(小松清訳),新潮社,1957
『絵画学入門 材料+技法+保存』,クヌート・ニコラウス(黒江光彦監修、黒江信子、大原秀之共訳),美術出版社,1985