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『筑豊のこどもたち』土門拳

Chikuho no Kodomo tachi, Ken Domon
更新日
2024年03月11日

1960年1月にパトリア書店から刊行された、土門拳の写真集。九州・筑豊の炭鉱に起きていた、鉱山の休業による失業と貧困の問題を社会に訴えたいという編集者の依頼に、土門が賛同。ザラ紙を使った100円の写真集というスタイルを自ら提案した。59年12月に2週間の撮影が断行され、デザインとレイアウトを亀倉雄策が、前書きを野間宏が担当。その体裁の斬新さと、内容の切実さが注目を集め、10万部を売り上げるヒット作となった。土門は特に鉱山の子どもたちの姿に焦点を当てており、中でも母親が出稼ぎに出た父子家庭の幼い姉妹を捉えた写真は表紙写真にも使われ、広く人々の心を打った。同年のうちに、その姉妹のその後の様子を中心とした続編、『るみえちゃんはお父さんが死んだ』が研光社から出版されたほか、映画版『筑豊のこどもたち』(製作・脚本:菊島隆三、監督:内川清一郎、配給:東宝)も公開。77年には、新装版『筑豊のこどもたち』が築地書館から刊行された。55年に「第1期リアリズム終焉宣言」をした土門の、「リアリズム写真」とは何であるのかを示そうとした実践的な試みとして、『ヒロシマ』(1958)と並ぶ重要作品である。

補足情報

参考文献

『筑豊のこどもたち』,土門拳,パトリア書店,1960
『筑豊のこどもたち』(新装版),土門拳,築地書館,1977
『るみえちゃんはお父さんが死んだ 筑豊のこどもたち続』,土門拳,研光社,1960
『土門拳全集11』,小学館,1985