中心と周縁
- Center and Periphery
- 更新日
- 2024年03月11日
文化人類学者の山口昌男による文化研究の主要な分析概念。著書『文化と両義性』において山口は、社会の中心性及び周縁性に関して先行する論考を整理し、その上で「中心/周縁」という、より二項対立的思考の枠組みと、特に積極的な意味を十分に論じられてこなかった「周縁」の側にあらためて意義を見出す視点を独自に提示した。社会は「中心」と「周縁」の有機的な組織化の上に成り立っており、すべての政治的宇宙は「中心」を持つと同時に「周縁」を持つという。それまで否定的な側面を担わされ、排除されるべきものと考えられていた「周縁」という概念は、山口によって他者性をはらむことで多義的な豊穣性を再生産し続けるという一面が意味付けられ、先行的な論考よりも大きな比重を置いて語られている。この発想は国内外の文化人類学に留まらず、大江健三郎が『叢書文化の現在4 中心と周縁』(岩波書店、1981)を編集し、その中で「周縁」の概念に基づいて小説家としてのあり方を自問しているように、20世紀後半の人文世界や各芸術にも強い影響を与えている。
補足情報
参考文献
『文化と両義性』,山口昌男,岩波書店,1975
『知の祝祭 文化における中心と周縁』,山口昌男,河出文庫,1988
『山口昌男著作集5 周縁』,今福龍太編,筑摩書房,2003
『叢書文化の現在4 中心と周縁』,大江健三郎ほか,岩波書店,1981