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ディテール

Detail
更新日
2024年03月11日

詳細や細部のこと。美術や建築の制作・実務レヴェルにおいては、全体性を獲得するためにディテールを描く/設計するのか、ディテールを集積することで全体をつくり上げるのか、細部と全体の関係を考えることが重要である。特に建築分野においては、設計図書を補うかたちで数々の「詳細図」を描くことは重要な作業となる。作業プロセスで描かれた建築家による一連の詳細図がディテール集として出版されることが多く、詳細図およびディテールが建築デザインの本質とも関わっていることを示している。「神は細部に宿る」という人口に膾炙した感もあるフレーズはミース・ファン・デル・ローエのディテールに対する情熱を代弁しているが、そこには現代建築におけるディテール主義の本源がある。一方、ディテール主義が装飾の排除と表裏一体の関係であったと見ることも可能だろう。A・ロースの論文「装飾と犯罪」(1908)を引くまでもなく、装飾は前時代的な様式建築の遺物として機能主義により批判にさらされたものの、様式建築において装飾を支えた工芸的、手仕事的な細部の洗練が見捨てられたわけではなく、むしろ現代に至るまでディテールのもつ装飾的、趣味的な価値は建築家のディテールの中に脈々と受け継がれている。

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参考文献

『季刊ディテール』,彰国社,1964-
『装飾と犯罪 建築・文化論集』,アドルフ・ロース(伊藤哲夫訳),中央公論美術出版,2011