デザイン・サーヴェイ
- Design Survey
- 更新日
- 2024年03月11日
1960年代半ばから70年代にかけて日本で隆盛した、都市、建築の調査手法。戦前から民家調査や考現学の調査手法としてすでに確立していたフィールド・サーヴェイ(実地を基本とした調査手法)の系譜ともいえるが、その特徴は集落全域の実測、図面化という点にある。日本で最初にこの用語を用いたのは、65年にオレゴン大学が行なった金沢幸町調査に、コーディネーターとして携わった建築史家の伊藤ていじである。伊藤は、66年10月号の『国際建築』で同調査の意義や内容について述べ、「デザイン・サーヴェイ論考」として発表した。この調査は、建築学、社会学などの研究者と学生、そして集落の人々との協働によって、集落の建物配置から個々の住宅の間取り、細かな生活の設えまでをひとつの実測図面にするという点で、当時としては画期的であった。同時に、高度経済成長の波に晒された日本の都市や建築が向かうべき姿を模索する人々、その素地としての伝統的集落や建築を追求し資料化する人々にとっては、新たな方法論を切り開く手本になった。例えば、法政大学で教えた建築家の宮脇檀は、デザイン・サーヴェイによって「創る者」の立場から空間創造の根源を探求し、また、明治大学で教えた建築史家・建築評論家の神代雄一郎は、集落の空間構造から共同体の性質を指摘した。しかし、70年代後半から80年代にかけて都市化が急速に進行すると、集落への関心の低下、プライヴァシー意識の向上などの理由から、デザイン・サーヴェイは勢いを失っていった。その後は、赤瀬川原平・藤森照信らによる「路上観察学会」(1986-)、陣内秀信『東京の空間人類学』(1992)、貝島桃代・黒田潤三・塚本由晴『メイド・イン・トーキョー』(2001)など、現代都市を読み解くさまざまなフィールド・サーヴェイ的手法が展開される。
補足情報
参考文献
『復刻 デザイン・サーヴェイ(『建築文化』誌再録)』,明治大学神代研究室、法政大学宮脇ゼミナール,彰国社,2012
『都市住宅』No.45,「創る基盤としてのデザイン・サーヴェイ」,宮脇檀,鹿島出版会,1971
『SD別冊』No.7,「日本のコミュニティ」,明治大学工学部建築学科神代研究室編,鹿島出版会,1975
『まちの見方・調べ方 地域づくりのための調査法入門』,西村幸雄、野澤康編,朝倉書店,2010
『東京の空間人類学』,陣内秀信,ちくま学芸文庫,1992