デジタル・ファブリケーション
- Digital Fabrication
- 更新日
- 2024年03月11日
レーザーカッターや3Dプリンタなどの、コンピュータと接続されたデジタル工作機械によって、3DCGなどのデジタルデータを木材、アクリルなどのさまざまな素材から切り出し、成形する技術。デジタル工作機械そのものは1980年代から製造業のレヴェルではすでに存在しており、工場には「CNC(Computerized Numerical Control=コンピュータ数値制御)」と呼ばれる工作物を加工する際の工具の位置や送り速度などを電子的に指令・制御する機械が設置されていた。1990年代後半からは技術進歩によってこうした工作機械の小型化・コンパクト化が可能となり、机の上に置けるまでのサイズとなった。こうした製造体制は「デスクトップ・ファブリケーション」とも呼ばれ、「デスクトップ・ミュージック(DTM)」や「デスクトップ・パブリッシング(DTP)」などと同様に、従来の製造業から離れた、ものづくりの個人化または一般市民レヴェルへの回帰を促進している。N・ガーシェンフェルドは『ものづくり革命』のなかで「パーソナル・ファブリケーション(個人的なものづくり)」の概念を提唱し、大規模大量生産へのアンチテーゼや、ものづくりに参画する人々の共同体形成といった、政治的・社会的な文脈からデジタル・ファブリケーションの意義をとらえ返した。ガーシェンフェルドによるマサチューセッツ工科大学の講義「(ほぼ)なんでもつくる方法(How to Make (Almost) Anything)」の受講者が作成した「スクリーム・ボディ」(街中で人に迷惑をかけることなく、その中に叫び声を「蓄積」しておける、防音・録音機能付きのかばん)や「逃走する目覚まし時計 clocky」(人から逃走するタイヤ付きの目覚まし時計)に代表されるように、メディア・アートやプロダクト・デザインの領域での実用例は多くあるが、近年では、東京の人気ブランドANREALAGE(アンリアレイジ)が2010年秋冬コレクションで3Dプリンタを用いてマネキンを作成したほか、オランダのデザイナー、イリス・ファン・ヘルペンが2013年春夏コレクションで3Dプリンタを使った服を発表するなど、ファッション・デザインの領域への波及も見られる。今後、技術発展によってより多様な分野へと影響が拡大していくと考えられる。
補足情報
参考文献
『ものづくり革命 パーソナル・ファブリケーションの夜明け』,ニール・ガーシェンフェルド(糸川洋訳),ソフトバンククリエイティブ,2006
『MAKE: Technology on Your Time Volume 01』,オライリー・ジャパン,2006
『FabLife デジタルファブリケーションから生まれる「つくりかたの未来」』,田中浩也,オライリー・ジャパン,2012