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デフォルマシオン

Déformation(仏),Deformation/Distortion(英)
更新日
2024年03月11日

変形、歪曲。情動、欲望、印象など視覚に従属しえない感情、あるいは作者の個性を表現・強調すべく、あえて見たままの再現描写を離れて著しく歪めて描く方法。「デフォルメ」という仏語で日本に定着している理由は定かでないが、おそらくはピカソなどの近代ヨーロッパ美術の作品を解説するために流入し、マンガ表現の一手法として広まったものと考えられる。形成、構成を意味する「formation」に否定の接頭辞deをつけた字義通りの意味だが、「変形」が認識されるには変形前の形態を想起させる必要があるため、必ずしも「formation」を否定するものではない。つまり「formation」の内に属する概念であるといえよう。上記した感情のほか宗教的な主題、枠や空間の意識、作品全体の調和などが再現性より優先されることで生まれるデフォルマシオンはあらゆる時代、文化に認められるが、とりわけ作者個人の主観が重視される20世紀以降の美術においては珍しくない手法となっている。美術史における顕著な例としては、自然らしさや整合性よりも美的感覚を優先して人体のプロポーションを引き伸ばし、ねじれた構成を多用した16世紀のマニエリスムが挙げられる。

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参考文献

『デーモンと迷宮 ダイアグラム・デフォルメ・ミメーシス』,ミハイル・ヤンポリスキー、乗松亨平、平松潤奈訳,水声社,2005
『芸術と幻影──絵画的表現の心理学的研究』,E.H.ゴンブリッチ、瀬戸慶久訳,岩崎美術社,1979
『かたちの生命』,アンリ・フォシヨン、阿部成樹訳,筑摩書房,2004
『マニエリスム芸術論』,若桑みどり,筑摩書房,1994