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「都市はツリーではない」クリストファー・アレグザンダー

"A City is Not a Tree" Christopher Alexander
更新日
2024年03月11日

建築家・都市計画家のクリストファー・アレグザンダーが1965年に発表した論文(”A City is Not a Tree” Architectural Forum 122(1); 122(2))。アレグザンダーは長い年月をかけて自然にできあがった都市(「自然の都市」)に、互いに関係をもつ物質的要素の集合(セット)が重なり合いながら集まるセミラティス構造を見出した。一方で、建築家・都市計画家による近代の都市計画や田園都市計画を例に挙げ、それらがセミラティス構造(セットの重なり合いを含む構造)のごく特殊なひとつの場合にしかすぎないツリー構造(セットの重なり合いをまったく持たない構造)をしていると述べた。セミラティス構造とツリー構造、これら2つのダイアグラムは、前者が後者に比べ多様な要素の集合を形成する可能性をもつことを示している。アレグザンダーは「自然の都市」に執着する保守主義を自身に認めながらも、建築家・都市計画家が「自然の都市にあって我々に活気を与えてくれるものを近代的な形で蘇らそうとしている」ことの重要性をふまえその現状を批判した。そして、「自然の都市」に備わる抽象的な秩序に対してさらなる研究の必要性を説いたのち、「都市はツリーではない」の理論をより具体的な設計ツールの開発へと展開させて、77年に「パタン・ランゲージ」を発表した。本論文は、建築家の磯崎新、評論家の柄谷行人をはじめとした、日本におけるポストモダンの都市論に大きな影響を与えた。

著者

補足情報

参考文献

『建築の解体』,磯崎新,美術出版社,1975
『隠喩としての建築』,柄谷行人,講談社,1983
『別冊國文学 知の最前線 テクストとしての都市』,「都市はツリーではない」,クリストファー・アレグザンダー(押野見邦英訳),學燈社,1984
『パタン・ランゲージ 環境設計の手引』,クリストファー・アレグザンダー、サラ・イシカワ、マレー・シルバースタイン(平田翰那訳),鹿島出版会,1984