Artwords®

ドリッピング/ポーリング

Dripping/Pouring
更新日
2024年03月11日

ジャクソン・ポロックのオールオーヴァーの絵画に用いられた技法。床に広げた支持体に筆やスティックに付着させた液状の顔料を飛散させて描く手法のこと。この技法においては、通常の絵画のように筆と支持体とが直接触れ合うことはなく、手首のスナップや腕のスイングを効かせ、顔料が空中に放たれるようにして支持体に定着する。顔料を撥ね散らし、滴らせる(drip)、あるいは流し込む(pour)ようであることから、この技法の呼称として、ドリッピング、ポーリングという二種の語が定着した。ポロックはこの技法に際してエナメルやアルミニウム塗料などの商業用の塗料も用い、絵具の粘性など、各顔料がもつ特性を意識的に活用した。この技法の影響源としては、画面を水平にした状態で描かれるネイティブ・アメリカンのナバホ族の砂絵や、絵具の入った缶に穴を開け、缶をキャンヴァスの上で振りまわして描くM・エルンストの「オシレーション」などが指摘されているが、直接的な影響関係が証明されているわけではない。「ドリッピング」の語のほうが比較的頻繁に使用されるが、慎重なコントロールと即興性とを共振させ、画面を線の網で覆うポロックの絵画では「ポーリング」の語のほうが適切であるとする向きもある。

著者

補足情報

参考文献

『愛知県美術館研究紀要』17号,「ジャクソン・ポロック オールオーヴァーのポード絵画の成立過程」,大島徹也,2011