ナラティヴ・アート
- Narrative Art
- 更新日
- 2024年03月11日
過去の出来事の一場面やこれから起こりうるであろう事象を、具象的に描く表現方法。聖書や神話をテーマとした宗教画や歴史上の出来事を描いた歴史画にとどまらず、19世紀までの美術はなにかしら物語的な要素を帯びていた。なぜなら、古代から美術作品、特に絵画は、聖書や歴史上の物語をわかりやすく人々に伝えるための視覚メディアとしての役割を持っていたからである。しかし19世紀後半になると、当時の画家たち、特にギュスターヴ・クールベやエドゥアール・マネは歴史的な、あるいは神話上の出来事を描くことを嫌い、同時代の生活や風俗を好んで描くようになった。その後、抽象絵画が隆盛を極めるのに伴い、絵画の自立性が叫ばれようになると、モダニズムの画家たちにより徹底的に排除され、軽蔑的に「ナラティヴ(物語風な、文学的な)」と呼ばれるようになった。ところが1960年代半ば、依然としてナラティヴを排除する風潮が続くなか、それでもナラティヴな作品を描く作家が登場してきた。60年代に台頭したポップ・アートやニュー・レアリスム、ヌーボー・レアリスムといった動向は、物語的な要素を含む具象性を特徴としている。近年、ナラティヴな表現方法は、精神医学の臨床領域で注目を集めている。