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『日本近代美術論争史』中村義一

Nihon Kindai Bijutsu Ronso Shii, Gi’ichi Nakamura
更新日
2024年03月11日

美術評論家の中村義一(1929-)による評論集。日本近代美術史を、作品の様式史ではなく、美術をめぐる議論の展開として捉えた。1981年に求龍堂から出版され、翌82年に『続日本近代美術論争史』も刊行された。中村は同志社大学文学部を卒業し、出版社、新聞社勤務を経て、大阪読売新聞などにおいて美術評論活動を行なっていた。本書および続編の主な内容は、「書は美術ならず」論争(1882年)、裸体画論争(1889年頃)、歴史画論争(1898年頃)、絵画の約束論争(1911年頃)、生の芸術論争(1914年)、戦争画論争(美術家の節操論争)(1945年頃)、リアリズム論争(1946年頃)等を含む。中村は、美術について発言する人々がただ美術についてだけでなく、それ以上の思想や信条、国家や文明、時代のことを論じていたことに着目し、有名無名の美術家、詩人、小説家、評論家、匿名の人々の言葉を収集し、その発言の生々しさを保ったまま複雑な文脈を整理づけ分析した。本書は美術における言説史研究の金字塔であり、30年を経た今日もしばしば参照され続けている。

著者

補足情報

参考文献

『日本の近代美術』,土方定一,岩波書店,2010
『美術八十年史』,森口多里,美術出版社,1954
『日本近代美術論争史』,中村義一,求龍堂,1981
『続日本近代美術論争史』,中村義一,求龍堂,1982
『日本プロレタリア美術史』,岡本唐貴、松山文雄,造形社,1967