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『日本の伝統』岡本太郎

Nihon no Dento, Taro Okamoto
更新日
2024年03月11日

1956年に光文社から出版された、美術家の岡本太郎による日本文化論。岡本は冒頭、従来の伝統観に立つ権威的な「伝統主義者」を痛烈に批判し、「われわれはいま、過去の日本と同時に西洋の伝統をも、ともども引きうけ、そして克服してゆかなければならないのです」と、高らかに宣言した。続く章で、縄文土器について初めて考古学的にではなくモダン・アートの視点から高く評価した。こうして日本美術史の原点に縄文の火焔土器の激しい表現があったことを根拠に、従来日本的なものとして考えられていた「はかなさ」や弱々しさといった通念をくつがえし、むしろ力強い日本観を打ち立てたといえる。さらに尾形光琳の《紅白梅図屏風》などを挙げて、情念的なものやアカデミズムに支えられた美しさを批判していった。美術の外部でも、建築家の丹下健三など、当時岡本の主張に共鳴した芸術家は少なくない。岡本の『今日の芸術』(光文社、1954)とともに、わかりやすく挑発的な言葉でモダン・アートのあるべき道を説く書物として、今も版を重ねる一冊である。

著者

補足情報

参考文献

『日本の伝統』,岡本太郎,光文社,1956
『今日の芸術』,岡本太郎,光文社,1954
『美術批評と戦後美術』,「伝統論争 六〇年代アヴァンギャルドへの隘路」,北澤憲昭,ブリュッケ,2007