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『日本の都市空間』

Nihon no Toshi Kukan
更新日
2024年03月11日

伊藤ていじや磯崎新が中心となり東京大学丹下研究室および高山研究室の大学院生が集まったグループ「都市デザイン研究体」が、雑誌『建築文化』の特集「日本の都市空間」(1963年12月号)においてまとめた内容をベースに、その後図版などを拡充し1968年に書籍として出版したものである。同書では、日本における歴史的な都市事例分析を通し、形態学的なアプローチから日本特有の都市形成原理を導き出している。抽出されたさまざまな原理には、「あられ」や「隅掛け」といった巧みな和名が付けられ、ダイアグラムや豊富な図版とともに説明が加えられている。これらの分析は、当時すでに『日本の民家』を出版していた伊藤からの情報提供によるところが大きいと、後に磯崎は述べている。また、同書の冒頭に収められた磯崎による論考「都市デザインの方法」では、それまでの都市デザインの潮流を分析したうえで、都市デザインのための新たな概念的な手法を導くべく議論を展開している。これら『日本の都市空間』の内容は、後に続く宮脇檀のデザイン・サーヴェイ(1966-)や神代雄一郎の共同体調査(1968-)、原広司による集落調査(1972-)などのよりアカデミックなフィールドワークに比して客観性に欠くとして批判されることもあるが、日本の都市空間の特質を的確に捉えて言語化し、それを都市デザインの手法へと繋ぐ試みとしてはきわめて先駆的であり、重要な成果であるといえよう。

補足情報

参考文献

『建築文化』1963年12月号,特集=日本の都市空間,彰国社
『日本の都市空間』,都市デザイン研究体,彰国社,1968
『10+1』No.37,「『日本の都市空間』の頃 『建築文化』、「間」展、デリダ」,磯崎新+日埜直彦,INAX出版,2004
『メタボリズム・ネクサス』,八束はじめ,オーム社,2011