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ハンディカメラ

Handy Camera
更新日
2024年03月11日

携帯用のヴィデオ撮影カメラ。ヴィデオ撮影のための機材は、技術の進歩に従い簡便化・軽量化して個人でも扱えるものになった、その利点を活かしてマスメディアの一方的な映像の押し付けに抗うようなヴィデオ作家たちが1960年代後半から世界中で生まれた。65年、ソニーが肩掛け式携帯用1/2インチのヴィデオカメラ・レコーダー、「ポータパック CV-2000」を発売すると、同年、ナム・ジュン・パイクはニューヨーク訪問中のローマ法王を当日買ったポータパックで撮影し、その日のうちにカフェ・ア・ゴーゴーでのイヴェント「エレクトロニック・ヴィデオ・レコーダー」にて、同じ出来事を放映するTVニュースと並べて上映した。この出来事はマスメディアの映像の独占に対して、個人が主体的に映像を制作し発表する時代の到来を示した。ハンディカメラによる個人や市民の視点による映像の展開は、その後アメリカではサンフランシスコのグループ「TVTV」や「ゲリラ・テレビジョン」、パブリック・アクセス・チャンネルといった運動へとつながり、70年代には民衆的なメディアを獲得・構築しようという世界的な運動となっていく。カナダのヴィデオ・アーティストであるマイケル・ゴールドバーグが72年にポータパックを持って来日し、アーティストへの普及活動を行なったが、日本社会での映像の活動があまりに体制順応的なものばかりで、アーティストやアクティヴィストによる映像の活動が不活発であることに驚いたという。このようなハンディカメラによる個人的な視点の映像を普及させるというテーマは、近年の携帯ツールの映像、インターネットやYouTube、Ustreamなどの登場により、表向きは達成された観がある。しかし、かつて見られたようなラディカルな反体制的なものは少なく、消費者性が蔓延しその多くはマスメディアに流れている制度的な映像(TVやアニメ、プロモーション・ヴィデオなど)を模倣するものである。

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補足情報

参考文献

『ゲリラ・テレビジョン』,マイケル・シャンバーグ、レインダンス・コーポレーション(中谷芙二子訳),美術出版社,1974
『情報社会を知るクリティカルワーズ』,田畑暁生編,フィルムアート社,2004