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《バルセロナ・パヴィリオン》ミース・ファン・デル・ローエ

Barcelona Pavillon, Ludwig Mies van der Rohe(独)
更新日
2024年03月11日

ミース・ファン・デル・ローエの設計で、1929年のバルセロナ万国博覧会で建設されたドイツ館。《バルセロナ・パヴィリオン》には、たった一体の彫刻と、自身がデザインした家具以外には、中には何もなく、その建築物自体が展示物になるように設計された。博覧会終了後に一度取り壊されたが、86年に同じ場所に復元され、現在はミース・ファン・デル・ローエ記念館として使用されている。大理石の壁とクロームが貼られた十字形の柱、池からなる平面は、シンプルでありながらも敷地内のあらゆるパサージュをブロックするようにデザインされており、来場者は少しずれた壁のあいだを移動するたびに方向転換することを余儀なくされる。ミースはこの数少ない壁で来場者の動線をデザインしており、そのため実際にパヴィリオンを訪れると、想像以上に全体を把握することが難しい。また、壁と十字形の柱に支えられた屋根は、まるで空中に浮かんでいるような印象を与え、建築批評家のロビン・エヴァンスは空中に浮かぶ屋根を引き留めるために柱があるようだと称した。また、パヴィリオンは地面から数段上がった大理石の基壇の上に建っているが、建物の内外を区別することなく、同じ素材の大理石が使用されているため、建物の内部と外部の境界が曖昧になっている。このように、《バルセロナ・パヴィリオン》は、現代の建築家が目指す建築の要素を多分に含んでおり、80年以上前に建てられた近代建築のマスターピースであるだけでなく、現代の建築家に影響を与え続けている建築と言える。

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補足情報

参考文献

『ミース・ファン・デル・ローエ』,ワーナー・ブレイザー編(渡辺明次訳),A.D.A.EDITA Tokyo,1976
『バルセロナ・パヴィリオンの空間構成の方法』,高砂正弘,パレード,2009
『ミースという神話 ユニヴァーサル・スペースの起源』,八束はじめ,彰国社,2001
『ミース・ファン・デル・ローエの建築言語』,渡邊明次,工学図書,2003
Mies Van Der Rohe: Barcelona Pavilion,Ignasi Sola-Morales Rubio et al.,Gustavo Gili,1993