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美術科教育

K-12 Art Education
更新日
2024年03月11日

美術科教育は、美術教育のなかでも特に小中高での教科教育を指す用語である。美術家やデザイナーを育成するための専門的な美術教育とは区別され、人格形成や美的感覚の涵養の目的で行なわれる。その研究は、主に教育内容、教材、教授行為、学習者の四領域に分かれ、美術教育の教員を中心に実学的な研究が盛んに行われている。歴史的には幕末の蕃書調所の画学が出発点であり、近代には厳格なディシプリンに基づく教育と、洋画家・版画家の山本鼎に代表される自由主義とのあいだを揺れ動きながら発展してきた。20世紀前半は手本模写や石膏デッサンが中心的なカリキュラムだったが、戦後は米国流の自由主義を取り入れて子供の創造性を自由に育む教育を目指した。とりわけ、美術評論家の久保貞次郎が中心となって1952年に発足した創造美育協会は、全国的な児童画ブームを巻き起こし、戦後美術教育の出発点となった。創造美育協会の活動は、大人びた技巧的な絵を排し、子供の描く大胆な色彩や自由な形態に美的価値を認めた点では大きな改革だったが、その一方で、「よい絵」と「よくない絵」を明確に分け、大人が理想とする「子供らしさ」を押し付けるという問題もあった。80年代には美術教育におけるディシプリンの重要性が再評価され、美術教育を学問分野に基づいて考えるDBAE理論や多文化主義理論の研究が盛んになった。今日では、制作過程を重視する指導論や地域密着型の美術教育活動(CBAE)などの研究が盛んである。美術科教育の大きな課題として、学校カリキュラムでの地位の低さがある。日本に限ったことではないが、数学や語学などの基礎教科に比べ、美術は二次的な分野とみなされ、義務教育課程での授業時間数削減の対象になってきた。DBAEやCBAEも、美術教育がより学術的なディシプリンと同等であり、また美術が社会に還元可能な活動であることを示すためのパフォーマンスとしての側面を担っていた。このように、美術科教育の理論的な支柱は、内部での研究の発達と、外的・社会的な環境の変化のなかで、つねに揺れ動いている。

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参考文献

『美術科教育の方法論と歴史』,金子一夫,中央公論美術出版,2003
『よい絵・よくない絵 親と教師のための児童画集』,創造美育協会愛知支部編,黎明書房,1956