ファム・ファタル
- Femme fatale(仏)
- 更新日
- 2024年03月11日
フランス語で「宿命の女(運命の女)」を意味し、しばしば文学や絵画のモチーフとして登場する。ラルース大辞典によると「宿命の女」とは、「恋心を寄せた男を破滅させるために、まるで運命が送り届けたかのような魅力を備えた女」のことである。ファム・ファタルという言葉の歴史は、さほど古いものではなく、19世紀末のデカダンスから生まれたものとされている。絵画で言えば、世紀末美術の象徴主義的作品に多く登場し、ギュスターヴ・モローやフェルナン・クノップフ、オーブリー・ビアズリー、フランツ・フォン・シュトゥック、エドヴァルド・ムンク、グスタフ・クリムトなどの幻想的世界において認められる。モティーフとしては、「サロメ」や「スフィンクス」などが具体的なファム・ファタルとして挙げられるが、神話などの登場人物以外にも「男を破滅させる女」という概念を体現する女性は皆、ファム・ファタルである。フランス文学において、はじめて登場するファム・ファタルは、アベ・プレヴォによって1731年に刊行された『マノン・レスコー』のヒロインであるとされ、その他、プロスペル・メリメの『カルメン』など多くの文学作品に登場している。
補足情報
参考文献
『マノン・レスコー』,アベ・プレヴォ(河盛好蔵訳),岩波文庫,1957
『悪女入門 ファム・ファタル恋愛論』,鹿島茂,講談社現代新書,2003