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フォーマリズム

Formalism
更新日
2024年03月11日

作品の形式的諸要素(線、形態、色彩など)を重視する美学的な方法のこと。美術作品独自の物質的な条件に関わり、その視覚的特性へと偏向することで、他ジャンルからの弁別と美術作品の史的展開の自律性・連続性がしばしば強調される。古くはK・フィードラーの純粋可視性の議論やH・ヴェルフリンらの美術様式論、ブルームズベリー・グループのC・ベルとR・フライの批評理論などがあり、ニューヨーク近代美術館の館長を務めたアルフレッド・バーJr.の自律的な抽象芸術の系統的・発展史的理解やC・グリーンバーグによるメディウムの純化と戦後アメリカ美術の擁護、M・フリードのメディウム・スペシフィックな議論などが登場し、美術史のみならず、現代美術の批評と実作の双方にも大きな影響力を及ぼした。フォーマリズムに関しては、誕生、発展、衰退などの擬生物学的なメタファーから美術の線的かつ統一的な展開を暗黙裡に前提とする様式史的立場や、内容に対して形式を重視する側面、政治的、社会的、倫理的コンテクストの排除などが問題視される。また、80年代以降は、記号論的な作品分析などによって反形式主義的なメディウム・スペシフィシティを開拓しようとするR・E・クラウスや、構造主義的な方法論の導入によるフォーマリズムの刷新を目論むY-A・ボワの登場によって、その方法論自体が批判的な検討の対象になった。フォーマリズムを乗り超えようとする彼らの批評的企図は、美術批評の新たな理論的展開に寄与している。

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参考文献

『セザンヌ論:その発展の研究』,ロジャー・フライ(辻井忠男訳),みすず書房,1990
『美術史の基礎概念:近世美術における様式発展の問題』,ハインリヒ・ヴェルフリン(海津忠雄訳),慶應義塾大学出版会,2000
『グリーンバーグ批評選集』,クレメント・グリーンバーグ(藤枝晃雄編訳),勁草書房,2005
『言語の牢獄:構造主義とロシア・フォルマリズム』,フレドリック・ジェイムソン(川口喬一訳),法政大学出版局,1988
『オリジナリティと反復:ロザリンド・クラウス美術評論集』,ロザリンド・E・クラウス(小西信之訳),リブロポート,1994
Art,Clive Bell,Chatto & Windus,1914
Art and objecthood: essays and reviews,Michael Fried,University of Chicago Press,1998