フォーヴィスム
- Fauvisme(仏)
- 更新日
- 2024年03月11日
「フォーヴィスム(野獣派)」は20世紀初頭の絵画運動のひとつである。1905年、パリで開催されたサロン・ドートンヌの一室は、若い画家たちによる激しい色彩表現が特徴的な絵画で埋め尽くされた。「フォーヴィスム」という名は、これを見た美術批評家のルイ・ヴォークセルが「野獣(フォーヴ、fauve)の檻の中にいるようだ」と発したことに由来する。主要メンバーは、エコール・デ・ボザールでギュスターヴ・モローに学んだアンリ・マティス、アルベール・マルケ、ジョルジュ・ルオー、そしてセーヌ河畔に共同アトリエを構えていたアンドレ・ドランとモーリス・ド・ヴラマンクなどであった。後には、ラウル・デュフィやジョルジュ・ブラック、そしてオランダ出身のキース・ヴァン・ドンゲンなどが加わった。彼らは、ポスト印象主義や新印象主義の画家たちから影響を受けたが、主に激しい色彩表現や原色の使用については、ポール・ゴーギャンとヴィンセント・ヴァン・ゴッホから学び、色彩理論についてはジョルジュ・スーラやポール・シニャックから学んだ。その結果、色彩がもつ表現力を重視するようになり、絵画の再現的、写実的役割に従属するものとしてではなく、感覚に直接的に働きかける表現手段として色彩を用いた。しかし、このような色彩主義の時代は長くは続かず、マティスこそ明快で豊かな色彩を生かした独自の表現を貫いたが、08年頃から次第にブラックはキュビスムへ、ドランとヴラマンクはセザンヌの影響から構成の世界へとそれぞれ関心が移行した。
補足情報
参考文献
『20世紀美術 フォーヴィスムからコンセプチュアル・アートまで』,ニコス・スタンゴス編(宝木範義訳),PARCO出版局,1986
『世界美術大全集 西洋編25 フォーヴィスムとエコール・ド・パリ』,島田紀夫、千足伸行編,小学館,1994