古着
- Used Clothing
- 更新日
- 2024年03月11日
古着は、かつては衣服を庶民に供給する補完的な手段であった。日本においては近代に入っても、着物の多くは古着となり、しばしば反物に戻されることもあった。一方でヨーロッパにおいては、古着市場は一昔前の貴族階級の流行の衣服を民衆に送り出し、上流階級から下層階級へと流行が滴り落ちていく構造を作り出した。大量に古着を仕入れ市場でさばく古着業者の業態は、大量生産を前提とした既製服市場へと姿を変え、近代の衣服産業へとつながっていった。その後、古着は、消費社会が到来すると既製服に圧されて次第に影を潜めていった。しかし日本では、1990年代になり既製服が普及しきるようになると、古着の意味に大きな変化が起こった。廉価なファッションの選択肢として誰もが手に取る身近なものになる一方で、骨董的価値を持つ古着も現われた。古着市場の拡大の背景には、既製服の品質が向上した割に使用年数が減少したため市場が形成されやすくなったことや、もともと既製服が特定の身体にあわせて作られていないために古着となっても誰でも購入できることなどが理由として挙げられる。しかしそれとは別に、近年のデフレとそれに伴う若年層の貧困化によって、ファスト・ファッションとともに、古着は若者にとって選択肢のひとつになっていることも確かである。
補足情報
参考文献
『古着』,朝岡康二,法政大学出版局,2003
『衣服のアルケオロジー 服装からみた19世紀フランス社会の差異構造』,フィリップ・ペロー(大矢タカヤス訳),文化出版局,1985