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フロッタージュ

Frottage(仏)
更新日
2024年03月11日

拓版、拓摺。凹凸の上に紙をのせ、鉛筆やクレヨンなどでこすって模様を写し取る技法。フランス語で「こする」を意味するfrotterに由来。原理的には古くから「拓本」として東洋で行なわれている原始的な版画技法。刷り上がりは孔版と同じく図像が左右反転しない。また、版面の裏側が作品となる「正面刷り」(浮世絵で活用される)の一種である。薄く柔軟性がありこすっても破れにくい紙が適しており、図像は素材の凸部が濃く、凹部は薄く色がつく。グラッタージュはこの応用。作品に与える偶然性は低いが、原版の作成が必要なく既存物の姿が直接紙上に浮かび上がるこの手法をシュルレアリスムはオートマティスムの一種と位置づけた。通常「フロッタージュ」と称する場合はM・エルンストをはじめとするシュルレアリスムの作例を指すことが多い。エルンストの主張によれば1925年に古い床板の荒れた木目に着目してこの手法を美術に取り入れたとされるが、彼は既にケルン・ダダの時期(1917-22頃)より実験的に試みていた。エルンストのフロッタージュを集めた『博物誌』はシュルレアリスムの代表的出版物として名高い。キリストが自らの顔に布を押し当てて姿を転写したというイコン唯一のオリジナル「聖顔布(マンディリオン)」も、(こすったかどうかはさておき)フロッタージュといえようか。

著者

補足情報

参考文献

『版画事典』,室伏哲郎,東京書籍,1985
『改訂版 版画の技法と表現』,町田市立国際版画美術館編,町田市立国際版画美術館,1991

参考資料

『博物誌』,M・エルンスト,1926