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ブック・アート

Book Art
更新日
2024年03月11日

本の形式をとった美術作品のこと。日本では、10世紀ごろから「絵巻物」という、絵と詞が組み合わされたアート・ブックが親しまれている。それより先に生まれた「経典」「古筆切」や、江戸時代後期に親しまれた「豆本」など、さまざまな形態の「本かつ美術品であるもの」が現在にも伝わっている。西洋では装飾写本がつくられていたが、19世紀後半にパルプ紙が大量生産されるようになると、印刷技術が急速に発達していった。これにより、世紀末美術やアール・ヌーヴォーの図版を取り入れた美術雑誌や作品集が出版されるようになり、工芸品のようなアール・デコの装丁本が流行した。その後、未来派、ダダ、シュルレアリスムといった美術運動の作家たちが、積極的に本の形式を取り入れた作品を制作した。また、第二次世界大戦前のフランスでは、ヴォラールやカーンワイラーら画商たちが、ボナール、ドラン、ピカソ、ダリといった当時の画家による版画を用いた挿絵本を出版していた。60年代に入ると、フルクサスがグループの活動記録やその宣伝のため、本や雑誌をつくるようになった。彼らはデュシャンの《グリーン・ボックス》や《ホワイト・ボックス》など、一連のボックス作品に影響を受け、箱状の本も残している。それらは「開いて、見る」という本来の本の形態だけでなく、「美術作品として置く」というオブジェとしての機能も果たした。そうした流れを受けて、70年代に加納光於や若林奮らが「ブック・オブジェ」として発表するようになった。80年代から大竹伸朗は、自身のドローイングと身近な印刷物やゴミなどを組み合わせた「スクラップ・ブック」をつくり続けている。

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補足情報

参考文献

「これは本ではない ブック・アートの広がり」展カタログ,森田一、滝口朋子、河野泰久編,美術館連絡協議会,2010
「本の宇宙 詩想をはこぶ容器」展カタログ,小勝禮子編,栃木県立美術館,1992
「本と美術 20世紀の挿絵本からアーティスツ・ブックスまで」展カタログ,徳島県立近代美術館,2002