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プロセス・アート

Process Art
更新日
2024年03月11日

作品それ自体の現前性よりも、作品が現象するまでの制作プロセスや作品の可変的な状態を強調する1960-70年代の現代美術の傾向。代表的な作品に、H・ハーケによる、プレクシガラスの箱の中の水分の性質が、周囲の環境的変化によって変わる《Condensation Cube》(1963-65)や、ギャラリーの床面に盛られた土に生える草の育成過程を見せる《草の育成》(1969)などが挙げられる。また、このような傾向は、1969年に開催された「アンチ・イリュージョン 手続き/素材」展(ホイットニー美術館)において顕著に実践されたものだった。主な出品作家は、アトリエではなく展示室内を作品制作の現場として発表を行ない、それらの作品では、制作プロセスが作品の現われと不可分に結合していることが強調された。また出品作中、R・フェレールは美術館の入り口に15個の氷塊を置き、氷は20時間のうちに溶解した。同展で、制作費5万ドルの借り入れに際して、一連の過程で金利が発生するまでの金銭の流れ=プロセスを、作家、美術館、取引銀行のあいだで交わされた書類や預金証明書などを展示することで見せたR・モリスのコンセプチュアルな作品《Money》も同様の傾向を示しているといえる。これらの作品では、芸術作品の自律的な現われこそが批判・吟味の対象となり、「時間」や「行為」など作品の成立に関わる諸々の作動要因こそが重視される。

著者

補足情報

参考文献

Anti-illusion: procedures/materials,Whitney Museum of American Art,1969