ベル・エポック
- Belle Époque(仏)
- 更新日
- 2024年03月11日
ベル・エポック(良き時代/美しき時代)とは、フランスにおける19世紀末から1914年に第一次世界大戦が勃発するまでの約25年間を指す。19世紀という時代は、市民社会・市民文化勃興の時代でもあったが、政治的には1789年のフランス革命から続く激動の時代であった。世紀後半に入ると、第二帝政期が樹立され、それも70年の普仏戦争によって崩壊、71年のパリ・コミューンと混乱が続くなか、第三共和制が樹立された。ベル・エポックのはじまりは、まだまだ政治的に不安定なこの第三共和制の只中であった。しかしながら、社会全体は産業革命も浸透し、成熟しつつある資本主義の影響が人々の日常生活に及ぶようになっていた。パリには人口が集中し、ボン・マルシェ百貨店が1887年にリニューアル・オープンしたことを皮切りに消費文化が花開き、1900年には約5,000万人もの入場者数を記録した第5回パリ万国博覧会が開催され、それに伴い同年に地下鉄が開通、市民生活は一変した。これはフランスばかりに見られる現象ではなく、他のヨーロッパの主要な国々においても、人々は大戦前の束の間の平和と繁栄を謳歌していたのである。このような華やかで享楽的な雰囲気に覆われていた時代背景のなかで、芸術では1880年代半ばから世紀末まで象徴主義が席捲し、20世紀頭になるとモダニスムの萌芽であるフォーヴィスムやキュビスムが登場した。また装飾美術では、アール・ヌーヴォーがヨーロッパ中で大流行し、百貨店や地下鉄などの建築物、家具・調度品、書籍、ポスターなどのグラフィック、ジュエリーなどあらゆるものにこの様式が表われた。そしてファッションの分野では、ポール・ポワレによって女性たちはコルセットから解放され、しなやかに身体を包む衣装によって活動の自由を獲得した。ベル・エポックは、あらゆる分野で新しいものが誕生し、現代生活のベースが築かれた世紀を跨いだ大転換期と言っていいだろう。
補足情報
参考文献
『世界史リブレット 世紀末とベル・エポックの文化』,福井憲彦,山川出版社,1999
『ベル・エポックの百貨店カタログ パリ1900年の身装文化』、,宮後年男監修,アートダイジェスト,2007
「コレクションにみるベル・エポック美しき時代 1900年前後の芸術」展カタログ,ポーラ美術館学芸部編,ポーラ美術振興財団ポーラ美術館,2003
『パリの冒険者たち ベル・エポックの芸術家群像』,井上勇,三一書房,1972