ベルナール&フランソワ・バシェ(音響彫刻作品修復)
- Bernard & François Baschet(Restoration of Sound Sculpture)
- 更新日
- 2024年03月11日
パリを拠点に彫刻家として活動していたフランソワ・バシェ(1920-2014)は、1952年に音響工学を学んだ兄のベルナール・バシェ(1917-2015)とともにバシェ兄弟として既存の楽器の分析を行ない、金属とガラス棒などを使った楽器として、誰もが演奏できる音響彫刻作品の制作を始めた。55年には作曲家ジャック・ラズリーと実験的オーケストラ「ラズリー・バシェ音響グループ」を結成。ヨーロッパや米国でコンサートを行ない、「エド・サリヴァン・ショー」に出演。その後もバシェ兄弟は世界各地で制作活動を行ない、1952年から2015年のあいだに約500作品を残した。日本には、作曲家武満徹の招きにより、日本万国博覧会(大阪万博EXPO’70)の開催に先立ち、1969年にフランソワ・バシェが助手のアラン・ヴィルミノと来日し、大阪の鉄工所をベースに日本人アシスタントたちと17作品を制作した。作品は鉄鋼館に展示され、来場者が作品を体験、コンサートも開催された。黒澤明監督の映画『どですかでん』(1970)にもその音は使われている。万博終了後、作品は解体され倉庫に放置され、一部は失われた。2010年、鉄鋼館がEXPO’70パビリオンとしてリニューアルした折に《池田フォーン》が修復展示された。それを機に13年、当時バシェの助手であった川上格知とバルセロナ大学の研究者マルティ・ルイツの手により《川上フォーン》《高木フォーン》が修復され、15年、京都市立芸術大学にて《桂フォーン》《渡辺フォーン》が修復され、コンサートが行なわれた。16年、東京藝術大学では万博公園管理事務所からの要請により、残された部材を移管し、部材の学術調査と作品の修復を計画。17年12月、修復不可能とされた《勝原フォーン》の修復がなされ展示とコンサートが開催された。その後も、コンサート、ワークショップ、音楽制作のための録音などに使用されている。
補足情報
参考文献
The Sound Sculptures of Bernard and François Baschet,François Baschet,Universitat de Barcelona,2017
『KLANG OBJEKTE』,フランソワ・バシェ、アラン・ヴィルミノ(恵谷隆英訳、宮崎千恵子監修),日本バシェ協会資料,2015
『サウンドアート 音楽の向こう側、耳と目の間』,アラン・リクト(木幡和枝監訳、荏開津広、西原尚訳),フィルムアート社,2010