マッキアイオーリ
- Macchiaioli(伊)
- 更新日
- 2024年03月11日
1850年代半ば、イタリアのリソルジメント(国家統一運動)を背景にトスカーナ地方で生まれた絵画の流派のこと。フィレンツェのカフェ・ミケランジェロに集った画家たちが、時代精神を表わすのにふさわしい新たなリアリズムを愛国主義のもとに標榜したことにはじまる。彼らはアトリエでの入念な仕上げを説くアカデミズムの教えを放棄し、自然の光を生き生きとした状態で定着させるべく色斑で描写した。こうした描法は1862年、フィレンツェの新聞『ガゼッタ・デル・ポポロ』により、イタリア語で「しみ」「斑点」を意味する「マッキア(macchia)」に由来する「マッキアイオーリ(macchiaioli)」という造語で揶揄されたが、画家たちはこの呼称をあえて受け入れた。しばしばフランスの印象派との関連性が指摘され、「イタリアの印象派」と呼ばれることも多いが、外光への強い関心はフランスの印象派に先立つものである。むしろマッキアイオーリの画家たちは、1855年のパリ万国博覧会を通じてもたらされたミレー、コローなどバルビゾン派の作品から大きな影響を受けた。またマッキアの使用は、16世紀ヴェネツィア派のティツィアーノやジョルジョーネが現実の印象を素早く捉えるのに筆触をあらわに描いたことからもインスピレーションを得ている。独立戦争に参加したメンバーの夭折、1870年のローマ解放による国家統一を経て、当初は政治的色合いの強かったグループも次第に個々の関心が向かう主題へと移行していく。例えばT・シニョリーニはフィレンツェとその近郊の自然風景を、S・レーガは穏やかな家庭生活と女性像を得意とし、G・ファットーリは統一後も解消されない社会的・経済的格差への幻滅から、質素な農村風景、牛や馬といった家畜を繰り返し描いたほか、単調な仕事に従事する兵士の姿など戦争の裏側にあるもうひとつの現実に眼差しを注いだ。
補足情報
参考文献
『イタリアの印象派マッキアイオーリ』,フランチェスカ・ディーニ監修,読売新聞社,2009
「イタリア印象派 近代絵画のあけぼの」展カタログ,読売新聞社,1979
The Macchiaioli: Painters of Italian Life 1850-1900,Edith Tonelli,Katherine Hart ed.,Frederick S. Wight Art Gallery