マルクス主義
- Marxism
- 更新日
- 2024年03月11日
ドイツの経済学者カール・マルクス(1818-83)、およびその共著者エンゲルスによって提示された理論。今日「マルクス主義」という場合、彼らの著作を批判的に継承した理論家たちの思想もこれに含まれる。マルクス主義は、とりわけマルクスの死後におけるエンゲルスの紹介を通じて、19世紀から20世紀にかけてもっとも強い影響力を誇った思想的動向となる。『資本論』『経済学批判』『ドイツ・イデオロギー』などがその代表的な著作である。ヘーゲル左派として出発したマルクスの思想は狭義の経済学にとどまるものではなく、彼の唯物論的歴史観、上部構造/下部構造といった概念の設定は哲学や芸術学の領域においても広く影響を及ぼした。美術批評の文脈に限って言えば、20世紀後半にルイ・アルチュセール、エルネスト・ラクラウ、シャンタル・ムフをはじめとする理論家たちがマルクス主義に新たな装いをまとわせたことで、マルクスの思想は従来の教条主義的な枠を超えて広く参照されることになった。とりわけ、しばしばポスト構造主義やニュー・クリティシズムと総称される理論の動向のなかでマルクスがたびたび参照されたことで、各分野の批評家たちがマルクス主義の理論を援用する事例は一時期きわめて多数に上った。
補足情報
参考文献
『資本論(1-9)』,カール・マルクス(向坂逸郎訳),岩波文庫,1969-1970
『経済学批判』,カール・マルクス(武田隆夫ほか訳),岩波文庫,1956
『ドイツ・イデオロギー』,マルクス+エンゲルス(廣松渉、小林昌人訳),岩波文庫,2002