メゾチント
- Mezzotint(伊)
- 更新日
- 2024年03月11日
直刻法による凹版技法の一種。フランスではマニエル・ノワール(黒の技法)と呼ぶ。ロッカーもしくはベルソと呼ばれる道具(先端が櫛のように細かく刻まれた弧状の刃物)を版全体に当てて無数のまくれを作り、それを削ることで描画する。削り取った部分が白く浮かび上がり、その加減でやわらかなグラデーションができる。まくれを作る作業(目立て)をムラなく行なうには相当の手間を要する一方、まくれは圧力でつぶれやすいために耐刷性に乏しく、印刷枚数は限られる。ドイツのL・ジーゲンが17世紀半ばに発明し、イギリスで肖像画家制作技法として広まった。絵画の複製に盛んに用いられたが、リトグラフや写真製版の登場とともに急速に衰退。20世紀に入ってからこれを復活、発展させたのが長谷川潔である。また長谷川に次いでこの技法を開拓し、カラーメゾチントを開発した浜口陽三の名も特筆される。
補足情報
参考文献
『版画辞典』,室伏哲朗,東京書籍,1985
『改訂版 版画の技法と表現』,町田市立国際版画美術館編,町田市立国際版画美術館,1991
『銅版画家長谷川潔 作品のひみつ』,横浜美術館,玲風書房,2006
『版画芸術』130号、2005年12月 特集:日本の銅版画 メゾチントのマチエール──長谷川潔・浜口陽三からの出発,2005
「20世紀版画の巨匠 浜口陽三」展カタログ,国立国際美術館,2002