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『メディア論 人間の拡張の諸相』マーシャル・マクルーハン

Understanding Media: the Extensions of Man, Marshall McLuhan
更新日
2024年03月11日

1964年に刊行されたマーシャル・マクルーハンの代表作であり、メディアに関する先駆的な論考である。主観的な発想に基づいて構成された文学的な語り口によって、発表当時から大きく賛否が分かれたものの、その着眼点と独創性によって今もなおメディア論の重要な古典とされている。マクルーハン理論の根底には、副題にも示されている通り「拡張」という概念が重要なキーワードとして据えられている。マクルーハンはテクノロジー、そしてその同義語としてのメディアはすべて人間の肉体器官の拡張と考えた。逆に言えば肉体的な機能の拡張として捉えられる技術はすべてメディアなのであり、『メディア論』のなかでは衣服・自動車・兵器までもが同様にメディアとして章立てされている。テレビを代表とする電子メディアは中枢神経の拡張として、あくまでそうしたメディアの一部として並列に扱われている。「メディアはメッセージである」という有名な言葉はここで誕生した。人々はメディアが発する内容にとらわれがちだが、メディアが現実を違ったかたちに再構成するものであるとすれば、形式、構造、フレームにこそ目を向けるべきだという主張が込められている。ほかに、データの密度が高く受け取り手の参与度が低い「ホットなメディア」と、受け取り手の参与度がより高い「クールなメディア」というのも、『メディア論』において示されたマクルーハン独自の分類として挙げられる。

著者

補足情報

参考文献

『メディア論 人間の拡張の諸相』,マーシャル・マクルーハン(栗原裕、河本仲聖訳),みすず書房,1987
『マクルーハン理論 電子メディアの可能性』,マーシャル・マクルーハン、エドマンド・カーペンター(大前正臣、後藤和彦訳),平凡社ライブラリー,2003
『メディア論』,難波功士,人文書院,2011
『マクルーハンの光景 メディア論がみえる』,宮澤淳一,みすず書房,2008