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山本作兵衛の炭鉱画

Yamamoto Sakubei's Coal Mine Paintings
更新日
2024年03月11日

筑豊の炭鉱労働者だった山本作兵衛が描いた炭鉱の絵。炭鉱労働や炭坑住宅(炭住)の暮らしの実態を墨と水彩で克明に描き出した。絵の余白に詳細な説明文を書き込む画風が特徴である。記録文学作家の上野英信や美術家の菊畑茂久馬によって見出され、画文集『炭鉱に生きる』(1967)を発表、没後の2011年にユネスコの世界記憶遺産に指定された。山本は1892年(明治25年)、現在の福岡県飯塚市に生まれた。幼少の頃より炭鉱労働に携わり、筑豊各地の炭鉱(ヤマ)を転々としながら、その記録を日記や手帳に残していたが、炭鉱事務所の警備員となった1960代半ばになって炭鉱画を描きはじめ、明治、大正、昭和と三つの時代の炭鉱の記録を絵に表わした。その数は1,000点を超える。筑豊に暮らす上野英信の手引きによって山本と出会った菊畑茂久馬は、その絵に衝撃を受け、美学校の生徒とともに模写し、200号の壁画を制作した。山本の炭鉱画は、近代絵画の水準からすると洗練されておらず、文字も含まれているため、モダニズムの観点からは評価されにくい面があるが、他方で近代絵画には望めない生き生きとした民衆絵画として評価されている。炭鉱が「近代」を支えてきたにもかかわらず現代社会から忘れられているように、山本作兵衛の炭鉱画は近代絵画によって切り捨てられたものを描き出しているのである。

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補足情報

参考文献

『炭鉱に生きる 地の底の人生記録』,山本作兵衛,講談社,2011
『反芸術綺談』,「作兵衛翁江戸日記」,菊畑茂久馬,海鳥社,2007
『地の底の笑い話』,上野英信,岩波新書,2002
「‘文化’資源としての〈炭鉱〉」展カタログ,目黒区美術館,2009

参考資料

『炭鉱に生きる』(映画),萩原吉弘,2006