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リノカット

Linocut
更新日
2024年03月11日

凸版技法の一種。床材に使用されるリノリウム(樹脂や木紛、コルク粉などを亜麻仁油と混ぜたものを、ジュートなどの布に塗布して固めた素材)を版に用い、彫刻刀で彫る。板目木版用の一般的な彫刻刀で彫れるが、先端が少しカーブした専用の彫刻刀もある。リノリウムは安価で刷りに対して丈夫で、やわらかく、木目の方向の制限がなく彫りやすいため、スチレンなどの素材が登場するまで美術教材としてもよく使われた。ただし、繊細な表現には向かない。リノリウム自体が発明されたのは19世紀後半のイギリスで、この版画技法が美術分野に登場するのは20世紀初頭。この技法の特質をよく活かした作家にマティス、ピカソがいる。またこの技法は60年代末以降の南アフリカ共和国で広まり、白黒のコントラストを活かした作品が多く生み出された。

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参考文献

『版画事典』,室伏哲郎,東京書籍,1985
『改訂版 版画の技法と表現』,町田市立国際版画美術館編,町田市立国際版画美術館,1991
Impressions from South Africa,1965 to Now,MoMA,2011