「リヴィング・スカルプチュア」ギルバート&ジョージ
- “Living Sculpture”, Gilbert and George
- 更新日
- 2024年03月11日
イギリスの現代アートユニット、ギルバート&ジョージの作品の中核をなすコンセプト。1969年1月23日、ロンドンのセント・マーティンズ・アート・スクール彫刻科の学生だったギルバート・プロッシュとジョージ・パサモアは、あらゆるものが彫刻であり二人のすることすべてがアートであるという発想のもと《Our New Sculpture》という作品を学内で「実演」した。これは、メタリックなメイクを施しビジネス・スーツを着た二人が手にステッキやタバコをもって同じポーズを取り続けるというものだった。同年、テーブルの上で無表情に踊りながら何時間も歌を歌うパフォーマンス《The Singing Sculpture》をギャラリーや音楽フェスティヴァルで発表、ギルバート&ジョージの存在を広く知らしめる作品となった。このアートとアーティストが一体となったパフォーマンスは《The Singing Sculpture》《Underneath The Arches》《The Red Sculpture》などとタイトルを変えながら世界中で何度も再演され、「リヴィング・スカルプチュア(・シリーズ)」と呼ばれている。またこのシリーズの発表以降、彼らは自らを「リヴィング・スカルプチュア」と称している。形としての彫刻ではなく、話すことも感情を表わすこともできる彫刻になりたかったと語る二人は、手紙を出せばそれがPost Sculptureになり、歌を歌えばSinging Sculptureになり、ついには生きることがLiving Sculptureになった。つねにスーツ姿で二人揃って作品を発表しているギルバート&ジョージにとっては、アートも日常も表裏一体であり、存在そのものがアートであることを体当たりで表現し続けているのである。リヴィング・スカルプチュアという理念は、写真やヴィデオ作品へと方法・媒体をシフトしている現在でもなお、二人の根底を流れている。
補足情報
参考文献
『ギルバート&ジョージ リヴィング・スカルプチュア’97 in 根津美術館』,美術出版社,1997
「ギルバート&ジョージ 現代イギリス美術界の異才」展カタログ,セゾン美術館,1997