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ロシア未来派

Русский футуризм(露), Russian Futurism(英)
更新日
2024年03月11日

1910年代に興隆したロシア・アヴァンギャルドの潮流。多くの詩人、作家、画家たちが新しい芸術を志向するという意味で名乗った名称。12年、ヴェリミール・フレーブニコフ、アレクセイ・クルチョーヌィフ、ウラジーミル・マヤコフスキー、ダヴィド・ブルリューク、ヴァシーリー・カメンスキー、ベネディクト・リフシッツらによるペテルブルクの詩人グループ「ギレヤ」が「未来人」を意味するロシア語「ブジェトリャーニン(будетлянин/budetljanin)」を名乗ったのが始まり。ギレヤはマニフェスト『社会の趣味への平手打ち』を発刊し、古い文学や詩を「現代の汽船から放り出す」ことを宣言した。イーゴリ・セヴェリャーニンを中心とする「自我未来派」、ボリス・パステルナークらが参加した「遠心分離機」、キエフやオデッサの詩人たちなど、未来派を名乗るグループがロシア各地で興隆した。絵画においては、カジミール・マレーヴィチ、アレクサンドラ・エクステル、ナターリヤ・ゴンチャローワ、オーリガ・ローザノワ、リュボーフ・ポポーワ、ダヴィド・ブルリューク、ナジェージュダ・ウダリツォーワらがキュビスムとイタリア未来派を総合したクボ=フトゥリズム(立体未来派)として活動した。ギレヤは絵画のクボ=フトゥリズムと密接な関係にあり、クルチョーヌィフの脚本とマレーヴィチの舞台美術による未来派オペラ《太陽の征服》(1913)を上演した。未来派の詩人たちは、「言葉そのもの」を掲げて文字の形象や音といった物質性に注目し、クルチョーヌィフは意味を超えた言葉「ザーウミ」によるナンセンス詩を制作した。ロシア革命後、マヤコフスキーは教育人員委員であるボリシェヴィキのルナチャルスキーの支持を受け、23年未来派のメンバーとともに雑誌『レフ』を発刊した。

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参考文献

『ロシア・アヴァンギャルド』,亀山郁夫,岩波新書,1996
『夢見る権利 ロシア・アヴァンギャルド再考』,桑野隆,東京大学出版会,1996
『ロシア・アヴァンギャルド 未完の芸術革命』,水野忠夫,PARCO出版,1985
『ロシア・アヴァンギャルド芸術 理論と批評 1902-34年』,J・E・ボウルト編(川端香男里訳),岩波書店,1988
『ロシア・アヴァンギャルド5 ポエジア 言葉の復活』,亀山郁夫、大石雅彦編,国書刊行会,1995