ABCアート
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- 更新日
- 2024年03月11日
批評家、バーバラ・ローズが、『アート・イン・アメリカ』誌の1965年10月号に寄稿した論考のタイトルであり、現在「ミニマリズム」ないし、「ミニマル・アート」と呼ばれる動向の別の名称。ミニマル・アートという名称は当時すでに普及し始めていたものの、ローズはこの潮流について記述する論考のタイトルとして、「ABCアート」なる語を使用した。ローズは、60年代半ばから後半にかけて現象したミニマリズムの影響源として、K・マレーヴィチとデュシャン、思想的・文学的な参照項として、L・ウィトゲンシュタイン、ロブ=グリエ、G・スタイン、音楽からJ・ケージやE・サティ、ダンスからM・カニングハムらの名を挙げている。したがってこの論考の目論見は、より包括的な領域からミニマリズムを記述することにあったと言える。実際ローズは、ミニマリズムの同時代的な動向として、L・M・ヤング(作曲家)やE・レイナー(振付家)、A・ウォーホルのフィルム作品や《ブリロ・ボックス》などを挙げている。また本論ではローズ自身、「共通の様式というよりも、共通の感性によって共通している」アーティストたちについて記述するという意図を明確にしていた。ジャドソン・ダンス・シアターでのR・モリス、Y・レイナー、J・ケージ、R・ラウシェンバーグなどの複雑な影響/協働関係などを考えれば、ミニマリズム自体が、ローズの提起したようなインターメディア的な特質から検討される余地はまだ残されているように思われる。
補足情報
参考文献
『ミニマル・アート』(アール・ヴィヴァン選書),千葉成夫,リブロポート,1987
『二十世紀アメリカ美術』,バーバラ・ローズ(原住雄訳),美術出版社,1970