60sレボリューション
- 60s Revolution
- 更新日
- 2024年03月11日
1960年代後半は、学生が主導する反体制的な政治運動が世界各国で同時多発的に起こった「政治の季節」と呼ばれる時代である。アメリカの公民権運動やヴェトナム反戦運動、フランスの五月革命(1966-68)、中国の文化大革命(1966-76)などに端を発した運動の熱は、日本、西ドイツ、イタリア、チェコスロヴァキアといったさまざまな地域に飛び火した。この時代の運動の担い手の多くは、第二次世界大戦後に生まれた中流階級出身の大学生だった。彼らの闘争は、60年代当時に限界を迎えつつあったアメリカのフォーディズム的なイデオロギーへの異議申立てとして理解されている。とりわけアメリカによるヴェトナム戦争への軍事介入は、大戦後のアメリカが抱える矛盾を露呈し、リベラルな学生たちを反戦運動や平和運動へと駆り立てた。国ごとの違いはあるものの、60年代の学生運動はさまざまなジャンルにまたがるカウンター・カルチャーやポップ・カルチャーと密接に結びついている。フォーディズム的な大量生産様式の特質をアイロニカルに転用したポップ・アートや、ゲリラ的な活動との親和性が高いハプニングなどの手法は、運動の戦術として積極的に取り入れられた。また、若者の暴力衝動やドラッグ文化を克明に反映したロックやアメリカン・ニューシネマは、運動に参加した学生たちの通奏低音となっている。印刷媒体が果たした役割も大きく、各国で運動を宣伝するための印刷物の自費出版が盛んに行なわれた。これらの動きは、68年をピークとして各国でさまざまな展開を見せ、その後73年のオイルショックによって収束する。フランス政府に政策の転換を迫った五月革命のように一定の成果を挙げた運動もあったものの、ワルシャワ条約機構の軍事介入を受けたチェコスロバキアの「プラハの春」や、日本における全共闘の崩壊などに見られるように、その多くは国家権力の介入によって制圧された。
補足情報
参考文献
『カルチュラル・ターン』,フレドリック・ジェイムスン(合庭惇、河野真太郎、秦邦生訳),作品社,2006
『パリ五月革命私論 転換点としての68年』,西川長夫,平凡社新書,2011
『一つの時代の始まり 五月革命の権力』,アンテルナシオナル・シチュアシオニスト編(木下誠監訳),インパクト出版会,2000
『ポピュラー音楽と資本主義』,毛利嘉孝,せりか書房,2007