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2009年06月01日号のバックナンバー
フォーカス
ドバイは死なず
キュレーターズノート
どろどろ、どろん──異界をめぐるアジアの現代美術
[2009年06月01日号(能勢陽子)]
「どろどろ、どろん」とは、幽霊、妖怪など、異界からの訪問者の到来を告げる、なんともいえない畏怖とおかしみを伝える擬態語である。子どもの頃、怪談話に興奮を覚えながら心底怯えた経験を、誰もが持っているはずだ。「恐いけどみたい」というアンビバレンツな感情は、人間が本質的に持っている欲望と禁忌の複雑な絡み合いそのものである。本展は、「あやしきもの」「いざなうもの」「ばけるもの」「みえざるもの」の章に分け、異界を通して人間の不条理、おかしみを現代美術のなかに読み取り、絵巻や幽霊画、民俗学的資料とともに示そうとするものである。
躍動する魂のきらめき──日本の表現主義
[2009年06月01日号(伊藤匡)]
「表現主義」は美術の世界ではよく知られている言葉だが、頭に「日本の」が付くと、「日本の表現主義というのは、あったのだろうか?」という疑問が浮かぶ。ありそうでなかったくくり方で日本の近代美術を見直してみようというのが、この企画展だ。 図録の巻頭言によれば「本展では、日本における表現主義的動向を西欧の美術概念の需要や模倣としてではなく、日本固有の表現の発露として」とらえることをねらいとしている。