まちなか展示の作り方⑮  KOSUGE1-16 長者町山車プロジェクト かたい山車 リサーチ編

長者町プロジェクト終了後、本展に向けてのリサーチが2010年1月より始まりました。まちの歴史や愛知県内の山車の文化の調査、長者町の経営者の方々へのインタビュー、制作のためのミーティングなど。

山車が有名な犬山市や半田市の博物館に行って、専門家や伝統工芸士の方にお話を伺う。

山車が有名な犬山市や半田市の博物館に行って、専門家や伝統工芸士の方にお話を伺う。

制作チームのミラクルファクトリーと空き家で山車会議

制作チームのミラクルファクトリーと空き家で山車会議

犬山祭りで山車の構造などを調査中

犬山祭りで山車の構造などを調査中

インタビューやリサーチも終わり、山車のイメージが固まってきました。ここで大きく2つの問題があがってきました。
ねり歩きをする予定のゑびす祭りは、毎年11月の中旬に開催されています。トリエンナーレは10月31日までのため、日程が合いません。
長者町のお祭り実行委員会は何度も会議を重ね、山車のためにもと開催日をトリエンナーレ期間にあわせて10月23日、24日へと日程を変更してくださいました。
お祭りの会議で山車プロジェクトの説明をするKOSUGE1-16の土谷氏とミラクルファクトリー

お祭りの会議で山車プロジェクトの説明

そしてもうひとつの問題は、制作+展示スペースの確保。
他の地域の山車をリサーチした結果、山車の美学は「”ギリギリ”を通るところにある」と考えた作家は、長者町の景観の特徴でもある「長者町繊維街」のアーケードサイズに合わせてアーケードを伸縮しながらねり歩くプランを設計。高さは最大5mになります。
長者町のスケールに合わせたこの山車は、まちなかの展示でも最大規模の立体作品となり、また重さも2トン程度になるため、簡単に動かすことはできません。
長者町内で制作スタジオ兼展示室になる天井高のある空間探しが始まりました。
長者町内で天井高4m以上の空間は荷さばき場しかありません。しかし、ほとんどの荷さばき場が通常営業しています。ひとつだけ取り壊しが決まっていたビルに、織物共同組合会長と共に会場提供のお願いにあがりました。
オーナーには、街からは会場提供の嘆願書もお渡しし、何度も協議を重ねた末、5月から取り壊し工事を始める予定を変更してトリエンナーレ会期終了日まで提供いただけることになりました。この旧モリリン名古屋支店ビル荷さばき場は、山車プロジェクトのスタジオ、展示室として、また会期前は長者町地区全体の展示施工を行うミラクルファクトリーの本拠地として、また会期中は様々なイベントの会場として大活用されました。
旧モリリン名古屋支店ビル 荷さばき場

旧モリリン名古屋支店ビル 荷さばき場

会場の確保と同時進行で、からくりストーリーのインタビューも行いました。
山車のからくりには古典的な演目が行われるのが一般的ですが、このかたい山車では、長者町の武勇伝的ストーリーをからくりに取り入れる仕掛けをつくるため、まちの方からお話を集めました。一番活気があった昭和30年代頃の話が数多く取り上げられ採用されたお話は、「伝説の運び屋、早川さん」のストーリー。
当時、各商店ではサービスの一環として商品を名古屋駅まで配送するサービスを行っていました。まだ車がなかった時代、運搬は自転車で行われ、早川さんは、とある会社の従業員さんで、小さな体のため自転車に乗ると足がつかないため、名古屋駅までノンストップで漕ぎ続けたという伝説。

山車に搭載された自転車を来場者が漕ぐと早川さんが動き回る仕掛けになっています。このような時代を経て、いまの長者町があることをからくりの中で継承しています。また、お祭りの時にだけ上演されるからくりの演目には大黒様が登場します。以前長者町にあった山車は二福神(ゑびす様と大黒様)が乗っていたという資料をもとに、やわらかい山車には、ゑびす様がかたい山車には大黒様が乗せられました。

からくりストーリーを調査中

からくりストーリーを調査中

からくり制作中!

からくり制作中!

歴史的な文脈を踏まえ、また調査やインタビューに基づく内容を取り入れて、山車の骨格が見えてきました。次回へ続く。。。

ブロガー:吉田有里
2011年3月4日 / 14:35

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