KENCHIKU | ARCHITECTURE ・・・その3

2010年の夏から秋にかけては、ひたすら企画書のブラッシュアップと、助成金の申請にあけくれていた。ポンピドゥーの延期を受け、紹介を目的とした展覧会ではなく、日仏でのアイデアの交換を目的としたディスカッション重視のイベントに内容を変更し、それにともなってプロジェクトの名前を「KENCHIKU | ARCHITECTURE 」に決定。建築という語は、明治期につくられた言葉で、それまで日本に建築家がいなかったのと同様に建築なる概念もなかった。しかしながら日本で建築を学んでいる私たちはそうした輸入されたコンセプトそのままに受け継いでいるかというとそうでもなく、それまでの日本の伝統的な工法や制度との融合や現代の都市空間の状況の違いによって独自に建築概念を生み出してきたともいえる。その我々の建築へのまなざしや捉え方を、西欧のアーキテクチャーとのそれとつきあわせてみていく事から、今回のプロジェクトをはじめてみたいと思った。タイトルにあわせて、運営主体としての実行委員会を結成した。といってもメンバーは国際的なプロジェクトの経験などほとんどない弱小チーム。それでも年末には、申請を出していた助成金のうち一件が受諾され、開催への目処がつくことに。

年を越えると、ここにきて会場に関する交渉は徐々に難しさが増し、CIteから別の場所に変更せざるをえなくなるという事態が発生してしまった。慌てて、その他の会場とのコンタクトに入ったのだが、時期的にどこも翌年のプログラムが既に決定してしまっている。これはやばいなと思い始めた時現れたのがベルギー人でパリを拠点に活動しているCedric。彼はZaha Hadidの事務所出身で、複数の大学で教鞭をとりつつ、建築家として、また展覧会のキュレーティングにもいくつか関わった経験がある人で、l’ESAという大学のギャラリー部門のディレクターを現在務めている。Benjaminからわれわれの企画を耳にした彼がプロジェクトに興味を持ち、大学と掛け合ってくれることになり、ほぼ会場の目処がたった。

会場探しと共に参加建築家をだれにするかを考える。30代ですでに実績があり、公共プロジェクトへと規模、内容が移行しつつある若手建築家に参加して欲しいと思った。日本国内を見るとたくさんの魅力的な建築家がリストにあがってくるが、フランス側のリストは中々充実しない。日本に比べて若くしてメディアに取り上げられる事が少なく、また若い建築家によるシンポジウムなども多くない(ヨーロッパ中の著名な建築家がいたるところでレクチャーを行っているので若手がよばれる出番がないのかもしれない)ので情報が圧倒的に少ない。結果的にはajapという若手建築家を対象とした賞が10年前から隔年で続いているのだけれども、その中から現在の若手建築家の活動の巾が浮かび上がってくるようにと考えた。

この段階で前回の訪問から1年が経過。会場、建築家の候補もほぼ固まってきていたので、再度パリを訪問し、l’ESAとの詰めの協議、建築家へのヒアリングを実施。l’ESAは正式にはEcole Spéciale d’Architectureというパリ市内唯一の私立の建築大学で、反アカデミズムをかかげるかなりラディカルな校風を持ち、名物は学長その人というかなり個性の強い教育機関のようである。(ちなみにこちらが現在の学長のOdile Decqさん。)毎週のようにヨーロッパ各地の建築家を招いてのレクチャーが行なわれていたり、付属のギャラリースペースでも常に建築家の展覧会が行われている。我々はそのギャラリースペースではなく、オーディトリアムに面した広いロフトスペースを使用する事になった。

以下建築家へのヒアリングの様子。建築家の事務所を訪問することは、それ自体楽しい。そこに建築家の思想がダイレクトに現れているというわけではないが、もうすこしナチュラルな好みや性格のようなものが現れているように思うからだ。それは日本でもフランスでも同じ。とはいえ、日本では絶対でてこないであろうアルコールがなぜか毎回振る舞われるというのがフランス風なのかも。

主に都市計画に関わっているGRAUはまだ設立1年ほど

GRAU事務所より

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さて、2度めの渡仏を終え、会場、時期、建築家、プログラム、テーマが決まり、いよいよ具体的に広報や制作を進めていった。

次回K|A最終回。

ブロガー:川勝真一
2011年11月21日 / 12:18

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