先に書いたように、そもそもこのプロジェクトは2年前に日本建築が大好きなフランス人留学生と、建築の展覧会の企画を始めたばかりの私の他愛もない、それでいてなぜか確信に満ちた会話からスタートしている。その後、構想のきっかけとなる状況は変化し、想定していた会場も変更になり、結局フランス側での予算獲得はほぼ失敗(ずいぶんと希望を持たされたものだったが)し、という紆余曲折を経て今年の6月に実質的に要素が確定して進めていく事となった。
まずやらなければならなかったのは参加建築家のインタビュー収録。友人でradlab.でも展示してもらったHyslomの星野君(建築学科出身で映像をつくっている)に撮影と編集を依頼し、と同時にフランス側でも撮影を実施。余談になるが、建築の映像表現というのは、これだけインターネットでの映像視聴が当たり前になったにもかかわらず、あまり開拓されていない分野だと個人的に興味を持っている。いつか建築の映像だけの展覧会を企画してみたいと密かに思っている。さて、暑い夏のさなかに撮影のため何度か東京/京都を往復。建築家の事務所を訪問し、主に自身の建築的思考がどのようなものと考えているかということを語ってもらった。やはり事務所を訪問するとそこにその人の個性がよく見て取れておもしろい。
同じ頃に偶然知り合った藤井さんが主に広報とスポンサー担当(あと主に日英訳)としてプロジェクトに参加することになり、海外プロジェクトへの経験も持っているメンバーの加入は非常に心強いものがあって少し体勢も安定していった。
その他、本番までを駆け足にメモ程度に記しておくと、、、粘り強くコンタクトをとった事で大使館からの後援も無事取り付ける事でができ、DM、WEBSITEなどのデザインは建築学科出身の若いデザイナーの飯田君におねがいし、paypalを利用した個人サポートの仕組みをつくり、会場設営や必要機材の手配を現地と進め、、、などと言っているうちに私と榊原の2人は開催の1週間ほど前に現地入りし、会場設営を現地のスタッフと共に実施。慣れない土地での設営は思い通りに行かないもので、結果毎日のようにホームセンターに通ってしまった。
さて、今回のイベントは主に3つの要素から成り立っていました。ひとつ目は展覧会、そしてトークセッション、最後がラウンドミーティング。展覧会はトークイベントの副次的なものとして考えており、各建築家に関心の在処が一番明確に現れているプロジェクトを模型をで展示してもらい、インタビュー時に撮影した作品解説映像をミニディスプレーにて展示することで、本人の口からの解説が聞ける仕組みになっている。
トークセッションは、日仏建築家がペアをつくり2日間で6つのセッションを行なうという内容で、今回のメインのイベントとして位置づけていた。インタビュー収録の中から浮かび上がってきた共通点を手がかりに「questioning the city conception」「from fragments to form」「macro in micro」「autonomy and heteronomy」「building atmospheres」「engagement figures」のキーフレーズを設定し、ペアリングを実施。交互のプレゼンテーション後に対話の時間をもうけた。全体としては日本の建築家が社会に対する自身の建築の位置づけが多様でチャレンジングなのにたいし、確固とした建築家という制度によって守られ、その中でロジカルに建築をつくろうとするフランス建築家という印象もみうけられた。(一般的にフランスの方が法律の規制なども多くチャレンジできないと言われるが、規制の面では日本もかなりきつい縛りがありその点のみを強調するとよくない。むしろ手続の方法が異なっているという指摘の方が実際的かもしれない。)
最終日のラウンドテーブルでは、参加建築家全員にあつまってもらい、トークセッションでは語りきれなかったトピックについて意見交換を行なった。前半は個別の作品写真を見ながら議論を行い、大幅に想定した時間をオーバーして行なわれた。両者に新鮮な視点を提供し複数のトピックが提示され有意義な時間だったと思う。後半は今後のKAの展開についての意見交換がもたれ、紆余曲折はあったものの、今回セッションを行なったペアでのコラボレーションを前提に来年度展覧会を目指す事が確認された。
より詳しい内容はKENCHIKU|ARCHITECTUREのwebsiteをみいていただけたらと思う。また、今回作成したDVDとカタログも販売する予定なので手に取っていただきたい。実際のところ、言語的な問題(言葉の持っているコンテクストの違い)や、時間的な制約によって、十分な議論が尽くされたとは言いがたいが、建築家同士が一定の時間を共有し、困難さ含め、お互いの位置する状況や建築をどのようなものとして捉えているのかという部分について知り合えたことは、来年度以降の展開に向けた確かな足場作りとなったと思う。すでにKENCHIKU |ARCHITETURE 2012は動き始めている。