RADの最初のプロジェクトがこのQueryCruise(以下QC)という領域横断型の連続レクチャー。RADの結成のきっかけでもあり、現在少し形式は変わったものの継続しているプロジェクトである。世の中にはいろいろなカタチで「答え」が溢れている。けれども、その「答え」らしきものの背後にある「問い」そのものの正しさが吟味される事は少ない。よって、まずは自分たちが今必要な、そして適切な問いを設定するための連続レクチャーを企画しようと考えた。題してQuery(=問いに)Cruise(こぎだす)。レクチャーの内容は建築そのものについてではなく、建築周辺での議論をとりあげることで、建築が今置かれている場所(建築の居場所)をあぶりだそうと試みた。
と同時にradlab.という場所で何ができるか、この場所のポテンシャルをどう「develope」できるかということを考えていた。偶然にもradlab.という場所とともに活動を開始した(同時にwebでのアウトプットを重視)ので、プロジェクトをつくる時にはいつもこの小さな実験室がどれくらいのパフォーマンスが発揮できるのかを同時に「実験」したいと考えている。この小ささをいかして他にはない形式を見いだせないだろうか。考えた結果QCは講演会ではなく、ゼミのように講師と受講生が同じテーブルを囲むという事、そして複数回にわたって同じテーマを掘り下げていくというフォーマットになった。
実現までに一番の問題は講師にどのようにしてコンタクトをとるのかという事だった。大学院をでたてのフリーターのような人間の人脈やコネクションは非常に狭く、その上建築関係者以外となると、知り合いをたどってという事がまず不可能。そこで常識的には失礼きわまりないのかもしれないけれど、とにかくこの人と思った人に企画書とお願いの文章を共にメールで送らせてもらう事から初めた。結果打率は野球選手の優秀な打者程度ではあったが、少なからずの方が快く返事をくださった。以後も時々同じような方法でお願いメールを送る事があるが、その事は領域横断性を担保する上で重要な要素ではないだろうか。
さて、以下がQCvol,1とvol,2のテーマと講師
1】「マックスバリュー」講師:五十嵐太郎(建築論)、大屋雄裕(法哲学)、南後由和(社会学)
価値:多様化する価値観を前にして、どういう判断がなし得るのか
2】「景観と町家の選択肢」講師:大庭哲治(都市社会工学)、佐野亘(公共政策)、加藤政洋(人文地理学)
保存:価値観の多様化をもろに受けている保存問題がどのレベルで問題かを問う
(各回のないようについてはRADのwebにログが残っているので参照していただきたい。)
ともになぜその事(テーマ)が問題なのかということを明らかにしようとしている。このことはこれからの建築にとって重要な姿勢として考える事ができのではないだろうか。問いの前提を疑うこと、つまり建設という行為の意味や意義についての問いへと踏み込む事が建築家に可能か。プロジェクトの目的と実践のはざまで決定のプロセスそのものの提示が、利用者や住まい手を含んだ恊働と共感のきっかけとなるように思う。
次回は現在開催中のQC vol,3。タウンとアーキテクトについて。