放課後アートリサーチ02: 北澤潤《放課後の学校クラブ》その2

みなさま、あけましておめでとうございます。2012年の始まりはのんびり実家で過ごし、高校の同級生やら大学の先輩やらと新年会をして幕を開けました。今回は、前回紹介した北澤潤さんの《放課後の学校クラブ》に対してぼくの思うところを書いてみます。

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「プロジェクト」から「生きた文化」へ

このプロジェクトを実践している北澤潤さん(http://junkitazawa.com/)は、病院の中に”村”をつくる《病院の村》(2008,筑波大学附属病院)や、商店街のなかに”居間”をつくる《Living Room》2010,北本団地ほか)などの活動を展開する現代美術家です。ある地域や施設のルールのなかに「村」「居間」「クラブ」などの枠組みをつくり、その場所で編み出した「仕事(日記を書く、家具を運ぶ、授業をつくる etc.)」「祭り」「食事」「授業」などの活動をしながら、そのコミュニティと共存していきます。これらは、さまざまなアクションによって地域の文化や施設の制度を批評し、可能性を拡張していく冒険的な活動です。《放課後の学校クラブ》の子どもたちも予期せずしてこの冒険に巻き込まれていきます。

いったいどこへ続いていくのでしょう?北澤さんの思いに賛同した「大人部員」によって浜田小学校コミュニティルームの「クラブ活動」の一環として展開しているこの活動では、なんだかわからないけど楽しそうだから集まった子どもたちが「新しい”学校”をつくる」という壮大な目標に向かってゆきます。そしてこの活動の根幹は「学校ってなんだろう?」という問いです。あたりまえのものとして受け入れられ、確かな存在であったはずの「学校」が、いざ自分たちの手で作ってみようと考えたときから、不確かなモヤモヤしたイメージに変わってゆく。そこから「授業」「係」「教室」「校舎」などが、その時その状況に応じてつくられていく。

実際に校舎ができて放課後にフリースクールや学童保育所のようなものができればいいのかというとそういう問題ではないと思います。学校について再考し、新しいイメージを提出するこの「クラブ活動」自体が続いていくこと、学校という場所のイメージを分解し、その要素で遊ぶ場があり続けること。ここでは、大人も子どもも「「放課後の学校」がどんなものなのかわからない」ということにおいて対等です。「わからないもの」にその都度かたちを与え、探っていくプロセス、活動の方法論自体を作り続ける活動であるといえるでしょう。

「プロジェクトが期間限定で終わらず、生きた文化であり続けること」は北澤さんが作家活動を始めた当初から問い続けている命題でもあります。《放課後の学校クラブ》においても、現在の部員が変わっても続いていく活動であるためには、この方法論を引き継いでいかなければなりません。活動を「継続」、「複製」すること、という課題へとつながっていきそうです。

次回へ続く!

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活動紹介03: アーティスト・イン・児童館2011山本高之プロジェクト《きみのみらいをおしえます》

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アーティスト・イン・児童館2011招待作家の山本高之さんが練馬区立南田中児童館の子どもたちと共に作った映像作品。

「青を引きましたね?あなたは、今日、一日が台なしです。好きな事をすると、いいことがあるでしょう」

子どもたちが自分で”占い”のルールを考え、仕掛けや衣装や屋台をつくり、お客さん(大人)に対して運勢を告げます。「他者の未来」というわからない世界を、自分で見定め、伝えるという体験は、子どもたち自身が来るべき日にするであろう体験を予言するものでもありました。

山本高之ウェブサイト → http://takayukiyamamoto.com/

山本高之プロジェクト《きみのみらいをおしえます》→ http://jidokan.net/blog/2011/1015-980/

ブロガー:臼井隆志
2012年1月6日 / 17:47

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