こんにちは、臼井です。ブログ更新も5回目。「放課後アートリサーチ」のコーナーも3回目になりました。
今回は、極地建築家の村上祐資(むらかみ・ゆうすけ)さん率いるチームが豊島区の小学校で展開しているワークショップ・シリーズ《秘密基地ヲ作ロウ。》について。
※このワークショップについてはartscape blog 第10タームで村上さんご自身が、第11タームでデザインを担当されているヒデホマレさんが連載されているので、詳しくはそちらをご参照ください。
極地探検家の経験をシェアする ー想定外の世界へ
ぼくたちが普通に生きていて訪れることはまず無いであろう「南極」。氷点下-80度、地平線の向こうまで氷で覆われ、氷と共に生きる世界。容易にシミュレーションできない世界が、同じ地球に存在しています。第50次南極地域観測隊(2009-2010)の越冬隊員として南極をサバイブをしてきた村上祐資さんが、その経験を子どもたちに伝え、予想のつかない世界を生きていくためのスキルをシェアするワークショップ《秘密基地ヲ作ロウ。》を豊島区立巣鴨小学校にて実施しています。2011年9月から2012年1月までの4ヶ月間、約10日の制作期間を設け、 設計図、模型、基地の制作、移動、設置のステップをふみながら、校内の各地に「秘密基地」をつくっていきます。
ぼくが実際に観に行ったのは12月の最後の設置の日でした。事前につくっておいた1/10サイズの設計図と模型を元に、体育館で実寸大の基地の製作を進めていきます。使える材料は「新聞紙」「ガムテーム」「紙ひも」の3つのみ。新聞紙を丸めただけの支柱で組み立てるだけでもとても大変なのに、それを学校内の畑やうさぎ小屋の裏や非常階段の踊り場などに運び、設置をしなければなりません。12月下旬の夕暮れ、極寒の手がかじかみ、身がふるえるなかで、設置の作業も悪戦苦闘。
「第一回の南極探検隊も、全くおんなじ経験してたんだよ」と、村上さんは子どもたちに言います。行ったこともない南極の状況を想像し、日本で基地の材料をつくり、南極へ運ぶ。しかし、実際に南極に訪れ設置することになったとき、想定外のことがたてつづけに起こり、それになんとか対応していく。行ったことのない場所で、やったことのないことをしようとしたら、もちろん想定外のことも起こります。このワークショップでは、学校の中を「日本」、校庭や畑を「南極」に見立てることで、「極地探検」という経験の一つの重要な要素を子どもたちにシェアしているのです。ワークショップによって「放課後」の時間の中に「南極」という想定外の世界への通路が開かれてゆきます。
この企画《秘密基地ヲ作ロウ。》は、南極観測隊員が子ども向けワークショップをしているということだけにとどまらず、「豊島区子どもプラン」における子どもの放課後対策事業の中で実施されていること、クリエイティブ・コモンズのライセンスをつけて普及させるという試みをしていることなど、興味深いことがたくさんあります。そのあたりについては次回!