Nadegata Instant Party《全児童自動館》   その1

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こんにちは、臼井です。前回までは子どもの放課後とアーティストやクリエイターの関わりについての事例を調べ、書き連ねてきましたが、今回から自分の仕事である「アーティスト・イン・児童館」の最新プロジェクト、 Nadegata Instant Party(中崎透+山城大督+野田智子)による《全児童自動館》についての記事を書いていきます。もともと編集の齋藤さんからのオーダーは「児童館の活動で何か新しい展開があれば」ということで、このことを書くまでにちょっと回り道をしてみたのでした。

アーティスト・イン・児童館2011では、2010年度からアーティストユニット「Nadegata Instant Party(中崎透+山城大督+野田智子)」(以下:ナデガタ)を練馬区立中村児童館に招待しています。中高生の居場所づくり事業「なかなかTIME」(毎週水曜日と土曜日の週2回、17:00~19:00の2時間は中高生専用の時間)と連動しながら、児童館に集まる中高生とじっくり交流を深め、そしてついに館全体をつかったプロジェクト《全児童自動館》が始まります。中高生がつくるオリジナルの「文化祭」の開催までを追った「ドキュメンタリー映画」。現在、その制作が始まり、開催2週間を迎えいよいよ盛り上がっている。

全児童自動館ウェブサイト:http://zenjido.jidokan.net/

アーティスト・イン・児童館というプログラムの紹介から、Nadegata Instant Partyというアーティストについて、そして会場となる練馬区立中村児童館とそこに集まる人達のこと、最後に彼らとともに実践しているプロジェクトへのぼくの希望を書いてこの連載を締めようと思います。もう数回、お付き合いください

新しい実践の土壌をつくる ―アーティスト・イン・児童館

「アーティスト・イン・児童館」とは、アーティスト(現代美術家)を、遊びを通して子どもの健全な育成を目指す施設「児童館」に招聘し、作品制作のためのアトリエ、ステージとして活用するプログラムです。ぼくが学生だった2008年頃に、子ども向けワークショップの手伝いなどをするなかで考案し、大学の奨学金を使って開始しました。現在までに4組のアーティストを招聘し、練馬区内の5つの児童館で実施されています。

このプログラムの狙いは、美術作品の制作と、子どもの遊びの普及・教育活動という2つの目的を統合した新しい実践を展開することです。さらに言えば、 2009年より東京都の文化政策の1つである「東京アートポイント計画」の一環として行われている本プログラムは、遊びと美術が接続し、新しい文化的実践の土壌を切り開くことを一つの使命としています。とはいえぼく自身はこれまでアートマネジメントのキャリアが無いままやっているので、暗中模索もいいところですが、この暗中模索にしかできないことをやっている、という自負があります

この「アーティスト・イン・児童館」というプログラムの提案と実施を通して、新しい「美」の捉え方に挑み続けるアーティストと共に、子どもたちが彼らの特技である「遊び」をもってその実践に参加しながら、”出来事”の作り方を学びとっていくことを期待しています。この”出来事”をつくる美術の有り様は、学校で習う計画の建て方や計算の仕方とは別のリテラシーであると考えています。また、子どもという存在、遊びという技法を作品に織り込むことで、アーティストが新しい「美」を提案してくれるよう期待し、そのサポートをします。遊びの中にいる子どもの無計画で即興的な行為の軌跡は、予定調和な美を問い直すエッセンスであると考えています。

そんな思いを持って展開しているこのプログラムですが、実施する児童館とアーティストをぼくがリサーチに基づいて選び、交渉しています。ではなぜ、このNadegata Instant Partyというユニットと練馬区立中村児童館と出会わせることを試みたのか。その経緯を記しながら、次回は招待作家、Nadegata Instant Partyについて書いていきます。

続く。

ブロガー:臼井隆志
2012年3月3日 / 00:11

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