現代の書表現は、実に多様です。大字仮名や少字数書、一字書、漢字仮名交じりの書、刻字、中国明清の時代の長条幅をベースとした多字数書など、展覧会に足を運べば多彩な表現に出会えます。「書は文字を素材とした視覚芸術」だといわれますが、今日においては、いわゆる「前衛書」など、「文字」という縛りから脱却した書表現も確認できます。


現代のような様々な書表現が誕生したのは、近代以降です。大正15年(1926)の東京府美術館(現 東京都美術館)開館を契機として、書の展示の場は美術館を主とすることとなり、以降、書は徐々に会場芸術としての自覚を深めました。美術館などの広い会場、高い天井、西洋風の壁面に適した表現を追求した結果、新たな表現が次々と誕生しました。そして、昭和23年(1948)の日本美術展覧会(日展)の書部門設置や、同年の全日本書道展(現 毎日書道展)の開催が、これの後押しとなりました。
新たな書表現の誕生はまた、書家が学ぶ古典や選文にも影響を与えました。近代より前にはあまり目が向けられてこなかった金文などの中国の古代文字や明清の時代の長条幅などを背景とした作品も多く生まれ、選文に関しても文字の意味内容よりも造形性を重視して選択されることも増えました。


本展では、佐久市立近代美術館のコレクションから現代的な書表現に注目して選んだ作品を紹介します。現代書の様々なジャンルに触れていただくとともに、書家ごとの表現の違いを味わってみてください。