にんぱくの主な所蔵品である人形は、木や和紙、染織品などの様々な素材からなるデリケートな資料です。そのため、人形が置かれた環境や経年による劣化からは、どうしてもまぬがれることはできません。これらの人形を末永く後世に伝えていくためには、修復は必要不可欠です。
 当館では人形の現状維持を基本とし、オリジナルの情報をできるだけ変えないという理念の元、平成21年(2009)度から継続的に修復を行ってきました。令和2年(2020)の開館時には博物館内に修復室を設け、修復技術者と共に人形修復を行うという、全国的にも珍しい当館の特徴的な事業の一つとして今日まで続いています。
 本展では、劣化の各症状・素材別の処置から、修復が困難な人形衣装の復元事例まで、これまで当館で行ってきた人形修復事業について紹介します。文化財としての人形修復はまだ始まったばかりです。にんぱくがこの15年間、試行錯誤をしながら培ってきた人形修復の成果と、その未来について考えます。

※「にんぱく」は、さいたま市岩槻人形博物館の愛称です。