当展覧会は、隣の市である山形県長井市の至宝をお借りして開催いたします。
芳文庫の彫刻は、ロダン、ブルーデル、グレコ、マンズー、桜井裕一、佐藤忠良などの近代彫刻の代表作を間近でご覧いただけます。菊地隆知氏は、不自由な右半身を抱え左手一本で全身全霊を込めて作品を彫り上げ数々の作品を残した版画家で、古民家、廃屋などの田舎の風景、子ども、最上川や雪景色など郷土の風景を題材とした作風で知られています。

◎芳文庫ギャラリーについて

 かつて山形県長井市を中心に近隣の印刷業を一手に担っていた芳文社の代表故・加藤嘉志朗氏(平成26年逝去)が、昭和54年8月に会社創立85周年を記念して敷地内に「芳文庫」名の「印刷を通して明治から昭和の地域経済や文化の変遷を知りうる」常設の資料館を作ります。併せて無料の文化情報誌「芳文」を月刊で発行します。
 一方で熱心な美術愛好家でもあった氏は、近代彫刻を中心とした優れたコレクターでもありました。約80点に及ぶ彫刻作品のコレクションは、氏の旧宅を改修した「芳文庫ギャラリー」に展示されますが、平成27年にご遺族からギャラリーとともに長井市に寄贈されました。
 この展覧会の一方の構成を担う版画家の菊地隆知氏は、月刊「芳文」発行の加藤氏と同級生であり、創刊号から表紙絵を依頼され、その大半の発行分の表紙を同氏の版画が飾りました。

◎菊地隆知プロフィール

 昭和5年(1930)長井市に生まれる。中学校教師時代に頭部に円盤が当たり大怪我を負う。この頃平塚運一『創作版画の技法と研究』に出会う。昭和31 年(1956)第24回日本版画協会展に初出品し入選する(以後3回連続入選)。以降、板画院創設者棟方志功氏との交遊始まる。昭和36年 (1961)、以前の怪我がもとで福島医大病院で手術。以後右半身不自由の身となる。
 以後様々な病気・苦難に見舞われる。心臓の持病があり心筋梗塞で7か月入院(1981)、脳梗塞で入院(2006)、これらの苦難にもかかわらず、木版画制作を左手一本で、下絵・彫り・摺りの全部を一人で行う。     
 平塚運一氏に師事し、日本板画院で活躍。平成5年(1993)日本板画院審査委員長。長年同院の理事・評議員として活躍。日本板画院棟方志功賞受賞、県美展委嘱、斎藤茂吉文化賞受賞、県美連名誉会員、山形児童文化会議同人、また俳人としても活躍。長井市の文化的町おこしについても多大な貢献をした。平成30年(2018)逝去。

【協力・写真提供】長井市
【後援】白鷹町、白鷹町教育委員会
【主催】白鷹町文化交流センター