今年2024年は、画家・白髪一雄の生誕百年にあたります。それを記念して、「生誕100年 白髪一雄展」を開催いたします。
 1924年、兵庫県尼崎市で生まれた白髪一雄は幼少の頃より絵に興味を持ち、京都市立絵画専門学校(現・京都市立芸術大学)に進学し日本画を学びます。卒業後には洋画に転向して、田中敦子、金山明、村上三郎らと「0会」を結成します。その数年後の1955年には、吉原治良をリーダーとする「具体美術協会」に参加し、以降「具体」の代表的な作家として世界的に活躍するようになりました。
 白髪の制作の代名詞となっているのが「フット・ペインティング」と呼ばれるもので、カンヴァスの上を足で滑るように絵具を伸ばして描きました。白髪はこの独特な作画方法によって戦後の前衛美術界で国際的に高い評価を得ていきます。
 1972年の「具体」解散後、白髪は比叡山にて得度し仏門に入ります。以降の白髪の作品には天台密教の世界観が現れるようになりました。
 本展覧会では、1970年代の作品を中心に約30点の白髪の絵画を並べ、彼が「フット・ペインティング」から仏教的世界へと至る道筋を紹介します。
 なお、本展覧会は大橋嘉一氏の寄贈コレクションから構成されています。大橋氏は、本学の前身の京都高等工芸学校色染科を卒業し、昭和初期に大橋焼付漆工業所(現・大橋化学工業株式会社、大阪府)を創立、化学者であり実業家として関西の財界で活躍した人物であり、1950 年代後半から 1970 年代にかけて日本の前衛美術の作品を収集し、若き白髪の支援者でもありました。