京都工芸繊維大学の前身校のひとつである京都高等工芸学校(明治35年開校)では、教材として多くの「参考品」を購入していました。それらは、講義や実習で生徒に示されただけでなく、地元京都で伝統産業に携わる人びとにもひろく公開されていたことがわかっています。
 京都高等工芸学校時代に購入された参考品としては、ロートレックやクリムトなどによるポスター類やアール・ヌーヴォーの陶磁器、ティファニーのガラス器類などがよく知られています。京都高等工芸学校の図案指導が欧米の最先端のデザイン状況を伝えることを中心としていたため、わたしたちもそのような欧米の美術工芸品をみていただく展覧会を多く企画してきました。しかし、京都高等工芸学校では、そのような欧米の美術工芸品だけではなく、日本の古美術やさらにアジアの工芸品や民族衣装なども購入し、収蔵していました。今回の展覧会では、京都高等工芸学校初期の収集品のなかから、これまであまり注目してこなかった中国大陸や朝鮮半島で製作された陶磁器を展示します。そこには後漢時代の出土品や三国時代の新羅でつくられた土器なども含まれています。京都高等工芸学校の図案教育の、これまで知られていなかった側面をご覧にいれることができると思います。
 明治時代後期から大正時代にかけての「ものづくり教育」のなかで収集された、ちょっと意外な東アジア陶磁器の数々から、当時の東洋へのまなざしをお楽しみください。