今にも動き出しそうな可愛らしい生き物たち。彼らは捨てられる予定だった古紙ダンボールを使って制作されています。造形作家・玉田多紀がダンボールを素材に選んだのは学生時代。気軽に手に取れ、創作の楽しさを味わえるという理由からでした。全身を使ってダンボールを丸め、制作しやすいように柔らかくしたり、水につけて解体したりと、ダンボールという一つの素材から粘土や絵具を作り、無限の可能性を引き出しています。

スケールの大きな玉田の作品は、その迫力で見るものを圧倒すると同時に、皮膚の質感や瞳の輝き、顔の表情など、細部の繊細な表現によって人々を魅了します。近年は、絶滅危惧種の生き物たちを数多く制作し、環境問題や社会問題など、現代を生きる我々が直面する課題をテーマに作品を発表し、人々に社会の在り方や人間としての在り様を問いかけています。また、ワークショップやSNSを通して、自身の生み出したダンボール造形の制作方法を積極的に発信し、作ること、表現することの楽しさを伝える活動にも力を入れています。さらに、「0歳からの芸術鑑賞」を合言葉に、大人から子どもまで、世代を越えて楽しめる展覧会を各地で開催しています。

昨年、各地で開催した個展「造形作家 玉田多紀 ダンボール物語」は、大きな話題を呼びました。この度の展覧会では、吉和の自然を題材とした新作の「物語」を加え、さらにパワーアップした内容で玉田多紀ワールドを余すことなくご紹介します。中国地方初の大規模個展となる本展は、見て、触れて、感じて、ダンボール造形の魅力を体感できる展覧会です。